令和元年度事業計画
 
 
 我が国経済は、年明け以降の後退局面入りリスクが高まったものの本年10月の消費税率の引上げに対応した国の臨時・特別措置に伴う経済財政運営の基本的政策効果もあいまった雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が更に進展し内需を中心とした景気回復に期待したいところである。
 我が国の木材需要量は回復傾向にあり、国産材供給量も増加傾向で平成29年の木材自給率は36.2パーセントとなった(林野庁、同31年4月2日公表)。また、同29年にエネルギーとして利用された木質バイオマスのうち木材チップは前年比13パーセント増の873万絶乾トンとなった(林野庁、同30年12月20日公表)。
 国産材チップ業界は、リーマンショック後に木材チップの重要な需要先である紙・板紙の内需は大きく落ち込みそれ以降は元の水準に回復することなく推移し、また、最近の発電用原木の需給ひっ迫などもあり、経営は厳しさを増している。
 今後、木材チップは製紙需要の大きな増加は期待できないと思われるものの林業の成長産業化に向けた改革を図るため、バイオマス利用の促進やセルロ―スナノファイバ―
(CNF)や木材成分を活用した飼料・肥料など新規需要の増加などを踏まえた国産材チップの安定的な供給に努め、長期的展望のもと将来を見据えた事業展開を図ることが必要である。
 このような各般の情勢を踏まえ、本年度は次の事項を重点的に取り組むとともに役員を構成メンバー(必要に応じ専門家等も招聘)とした委員会を設置し、当面する課題の検討を行うこととする。
 
 
1 東日本大震災復興対策の推進
東日本大震災の被害対策及び復興対策については、依然として、東京電力原子力発電所事故被害対策等、震災後8年を経てもなお大きな課題が残り、これらの課題に対応して着実な努力を続けることが求められている。
特に、木材チップ業界に関しては樹皮の処理が大きな課題であるが、風評被害対策も含めて行政とも緊密な連携をとり、木材関連の放射性物質基準値を徹底し、木材チップ生産の安定的な確保に資するよう努める。
 
 
2 合法伐採木材及び間伐材流通の円滑な推進
  一昨年5月に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリ―ンウッド法)」については、その適切な運用が図られるよう引き続き木材関係団体と連携に努めるとともに会員・賛助会員に対してて関連する情報の提供を随時行う。
また、合法伐採木材の適切な受入れと供給を各業種間で円滑に推進できるよう取り組むとともに適正な合法木材取扱事業者の認定に努める。
さらに、間伐材チップの確認のためのガイドラインに基づく間伐材取扱事業者の認定に努め、製紙業界などが必要とする間伐材証明の普及を促進し、製紙用間伐材チップの安定供給体制を支援し、間伐材チップの利用を推進する。
 
 
3 木質バイオマスによる発電利用への取り組み
  再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度においては、木質バイオマスを提供する事業者が間伐材等由来の証明された燃料を供給することが肝要であり、このことを確保するため林野庁のガイドラインに基づく適切な実施に努める。
また、間伐材・林地残材等については発電利用の需要が拡大しつつあり、素材生産事業体と連携してその安定供給体制の構築に努める。加えて、小規模分散型の熱供給システムとしての木質バイオマスによる地域熱供給の推進についても取り組む。
一昨年の総務省の行政勧告に伴う林野庁の指導等を受け、認定事業者に対する研修会開催、分別管理や書類管理の実施状況の現地確認(立入り検査)の実施、認定事業者氏名等の変更届や取扱実績報告書の提出徹底等発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインの周知徹底に努める。
 
 
4 木材チップの需給と価格の安定
 (1) 国産木材チップ利用の促進
電力固定価格買い取り制度(FIT)の開始、セルロースナノファイバー(CNF)資材など木材チップの需給動向の変化や今後の動向及び林業・木材産業に関する森林・林業行政の方向を見極め、国産木材チップの積極的な利用の促進に努める。
 (2) 木材チップ原材料の安定的確保
    木材チップに供する原材料が逼迫している現状を踏まえ、また、木質バイオマス発電用チップ需要の増大に対応するため、木材チップの安定的・効率的な供給体制を構築する必要があることから、素材生産業とも協力して木材チップなどの安定供給体制の整備に取り組む。
(3) 木材チップ業界の安定的経営に資する価格の安定化
木材チップの安定的な供給体制を構築するためには、紙パルプや木質バイオマス利用に伴う木材チップの需要状況に対応した再生産可能な適正なチップ価格の確保が必要であり、これを実現するよう努める。
 
 
5 木材チップの規格化への取組み
  木材チップはこれまで統一的な規格が定められておらず、今後木材チップ需要の多角化が見込まれるなかで、従来の個別的な基準等では対応が難しい面が生じることが憂慮されている。当連合会として、これらの課題を解決するため、平成24年に木材チップの規格を定めたところであり、これを全国の木材チップ生産者等関係者に周知し、木材チップの生産、品質の向上、流通の安定化を図る。
 
 
6 新規需要開発への取組み
木材チップ製造事業を主体とした効率的な経営を展開するため、広葉樹チップ、竹材チップなどの活用を含め木質系粗飼料、木質ペレット、湿地排水処理資材、セルロースナノファイバー(CNF)資材等の開発・広報に積極的に取り組むとともに、関係行政機関に対して木材チップの新たな需要開発の要請を行うなど、木材チップの需要開発を推進する。
 
 
7 林業労働力確保対策の実施
(1)林材業ゼロ災推進中央協議会の活動
当連合会は林業部会及び木材・木製品部会の委員として参画し、労働災害の軽減   に林業・木材産業団体と協力して取り組む。
(2) 林業退職金共済制度への加入促進
独立行政法人勤労者退職金共催機構が行う林業退職金共済制度への加入促進に努める。
 
 
8 木材需給動向収集調査及び情報の提供
  木材チップに係る各種情報等を収集・分析し、会員・賛助会員に提供する。 木材チッ プ市況やパルプ材価格等は当連合会ホームページに掲載する。
(1)木材チップの市況、需給動向の調査・提供・ホームページに掲載(毎月)
(2)全国のパルプ材・チップ価格の収集・提供・ホームページに掲載(毎月、
農林水産省統計情報部)
(3)パルプ材入荷・消費・在庫速報及び実績並びに木材チップ輸入量の収集・提供
(毎月、日本製紙連合会、経済産業省、財務省通関統計)
(4)木質バイオマス情報の収集・提供(随時)
(5)新規需要に関する情報収集・提供・ホームページへに掲載(随時)
(6)労働災害発生状況に関する情報収集・提供(随時)
 (7) 林野庁予算等行政情報の収集・提供(随時)
 (8) 災害情報及び復旧事業情報の収集・提供(随時)
 (9) その他

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