平成23年度事業計画
一昨年のリーマンショック以来の世界的な不況が続き、円高による製品輸出の減少、企業収益の悪化、設備投資の減少が見られ、国内消費も雇用情勢、所得環境の悪化により減少傾向にあるなど我が国の景気も回復が遅れている。とりわけ木材産業については、平成19年の改正建築基準法の施行に伴う大幅な住宅建築の減少が引き続き、平成22年は住宅着工件数も81万戸と極めて少ない状態にある。また、木材価格も引き続き低迷し、業況は極めて厳しく、先行きの不透明感も歴史的政権交代後も未だ払拭し難い状況にある。木材チップの主な需要先である製紙業界も需要が大幅に減退したままで、国産の木材チップは製紙需要の約3割を占めているに過ぎない。このような折に、3月11日東日本を襲った大地震とそれに伴う大津波による被害は東北地方を中心に筆舌につくせないほどの甚大なもので、これからの我が国経済に暗雲を投げかけている。
国産チップ業界も、円高の進行などにもより長期にわたり厳しい経営状況が続いており、平成22年も製紙需要の低迷から国産チップも大幅な減産を強いられてきた。今後についても大幅な製紙需要の増加は期待できないと思われる上に、東日本大震災の製紙工場の被害も大きく、国産木材チップ業界の先行きは厳しいものがあるが、昨今の外材チップから国産チップへの回帰の機運をとらえ、国産チップの安定的な供給に努め、長期的展望のもと、将来を見据えた事業展開を図ることが望まれる。
このような各般の情勢を踏まえ、23年度は次の事項に取り組むものとする。
1. 木材チップの需給と価格の安定
(1) 国産木材チップ利用の促進
木材チップの需給動向が変化している現状を踏まえ、木材チップの利用状況や今後の動向及び林業・木材産業に関する森林・林業再生プランなど林野行政の方向を見極め、国産木材チップの利用の積極的な促進に努める。
(2) チップ原材料の安定的確保
間伐材等木材チップに供する原材料が逼迫している現状を踏まえ、木材チップの安定的・効率的な供給体制を構築する必要があることから、間伐材チップなどの安定供給体制の整備に取り組む。
(3) 木材チップの安定的経営に資する価格の安定化
木材チップの安定的な供給体制を構築するためには、紙パルプやバイオマス利用に伴う木材チップの需要状況に対応した適正なチップ価格の設定が必要であり、これを実現するように努める。
2.木材チップの規格化等への取り組み
地域のバイオマス資源である木材チップを地域材として原料転換を行うための課題としては木材チップの規格化及び乾燥の問題がある。これらの課題を解決するため、現地の木材チップの生産、流通実態等を調査し、その結果を集約、分析して課題解決の方向性を見出し、課題解決に当たることとする。
3.新規需要開発等の取り組み
木材チップ製造事業を主体として効率的な経営を展開するため木質系粗 飼料、木質ペレット、湿地排水処理資材等の開発事業に積極的に取り組む こととし、関係行政機関に対して木材チップの新たな需要開発の要請を 行い、需要開発に取り組む。
4.合法木材及び間伐材流通の円滑な推進
合法木材の適切な受け入れと供給を各業種間で円滑に推進できるよう取り組むこととするとともに、合法木材取扱事業者の認定に努める。
また、間伐材チップの確認のためのガイドラインに基づく間伐材取扱事業者の認定に努め、製紙業界が必要とする間伐材証明の普及を促進し、製紙用間伐材チップの安定供給体制を支援し、間伐材チップの利用を積極的に進める。
5.林業労働力確保対策の実施
(1) 林材業ゼロ災推進中央協議会の活動に参画し、労働災害の軽減に努める。
(2) 林業退職金共済制度への加入促進を図る。
6.木材需給動向収集調査及び情報活動の充実
(1) 木材チップの市況動向調査(毎月)
(2) 全国パルプ材・チップ材の動向
(3) パルプ材入荷・消費・在庫速報及び実績、木材チップ輸入量等
(4) その他の情報