針葉樹チップ用原木の含水率(乾量基準含水率)について
平成22年度製紙用チップ、チップ用原木調査報告書より抜粋
4.3 結果(抄)
前年度(2009年)と今年度(2010年)に測定した全てのサンプルについて、樹種別にデータを整理した結果を表4.3.5および4.3.6にまとめて示した。表4.3.5は原木データ(略)、表4.3.6は円盤データのまとめである。表4.3.6には、本年度追加測定した全乾密度の結果を載せた。
なお、表4.3.7は、各樹種の全乾体積用の容積換算係数について、密度が平均値であると仮定した場合の、含水率による変動幅をまとめた表である。
丸太含水率はスギの含水率が最も高く、ついでトドマツ、カラマツの順であった。今回行った試験における標本数は各測定箇所について6〜7本であり、統計処理を行うには不十分だが、トドマツはカラマツよりバラツキが大きかったと考えられる。また、個々の含水率を見ると一般的な生材の含水率2)よりも低い値を示したものがあったが、今回用いたサンプルが伐採直後ではなく一定期間土場に置かれていた原木から得たものであることを考慮すれば、低い含水率のサンプルが混在することは当然であり、むしろ、実際の工場におけるチップ加工時の含水率に近い値が得られたと考えられる。
容積密度についてはトドマツが0.34〜0.41g/cm3、カラマツが0.39〜0.49 g/cm3、スギが0.31〜0.38 g/cm3と一般的な値の範囲であった3)。
丸太の短径(元口)と含水率、容積密度との間には、明らかな関連は認められなかった。
昨年と本年度の全てのサンプルから得られた樹種別の含水率、容積密度、全乾密度をまとめた表4.3.6の下欄に、全てのサンプルの含水率、水分率、容積密度、全乾密度の最小値、平均値、最大値をまとめた。全乾密度および水分率から生材体積を算出する容積換算係数が図4.3.12(略)に、容積密度と水分率から全乾体積を求める容積換算係数を図4.3.13(略)に示してある。測定した全てのサンプル(樹種:スギ、ヒノキ、カラマツ、トドマツ)について、これらの水分率および密度の最大値から最小値までの範囲をカバーする換算係数の範囲が、それぞれの図に矢印で示してある。これらの範囲が、今回測定して得られた含水率および密度データから求められる、針葉樹用の容積換算係数の取り得る範囲である。すなわち、生材体積用の容積換算係数は0.7〜2.8の範囲となり、全乾体積の場合が0.6〜2.6の範囲であった。今回測定した含水率は、土場に一定期間のあいだ安置された原木の含水率であり、工場への搬入時には、より高い含水率であったことが推測されるため、チップ工場への原木入荷の際に用いられる係数が、今回の結果よりも小さめになることは予想でき、実際に、聞き取り調査の中で0.6〜0.8といった回答もあった。しかしながら、係数が0.6の場合、たとえばスギであれば水分率が68%(含水率212%)でなければ、正しい体積が算出できず、過小評価となる。たとえば、今回得られた各樹種の含水率範囲に相当する容積換算係数(全乾用、密度は平均値とする)の範囲を表4.3.7にまとめた。これによると、スギの含水率(70.4〜199.6%)であれば係数は0.9〜1.6、ヒノキ(含水率85.7〜121.1%)は1.0〜1.2、カラマツ(含水率24.3〜70.7)は1.3〜1.7、トドマツ(含水率28.9〜100.6%)は1.4〜2.2の範囲にある係数が適切であることになる。今回聞き取った調査で得られた情報に限って検討するならば、現状では容積換算係数による体積の評価は、総じて過小評価の傾向があるとみられた。
1) 平成21年度 林野庁補助;製紙用間伐材チップの安定支援事業
「製紙用チップ・チップ用原木の安定取引普及事業 調査・分析事業報告書」 H22.3
2) たとえば、「木材の物理」p.25(1985)、文永堂
3) たとえば、「木材の物理」p.16(1985)、文永堂
表4.3.6 樹種別チップ用原木のデータまとめ (円盤)
樹種 |
|
含水率 |
容積密度 |
全乾密度 |
測定原木本数 |
|
% |
g/cm3 |
g/cm3 |
スギ 19本 |
最小 |
70.4 |
0.291 |
0.309 |
最大 |
199.6 |
0.418 |
0.448 |
|
平均 |
123.3 |
0.354 |
0.377 |
|
ヒノキ 11本 |
最小 |
85.7 |
0.379 |
0.403 |
最大 |
121.1 |
0.459 |
0.495 |
|
平均 |
98.8 |
0.415 |
0.447 |
|
カラマツ 13本 |
最小 |
24.3 |
0.357 |
0.371 |
最大 |
70.7 |
0.490 |
0.531 |
|
平均 |
47.8 |
0.437 |
0.465 |
|
トドマツ 6本 |
最小 |
28.9 |
0.294 |
0.309 |
最大 |
100.6 |
0.360 |
0.382 |
|
平均 |
61.2 |
0.331 |
0.348 |
全体 |
含水率 |
水分率 |
容積密度 |
全乾密度 |
% |
(湿量基準含水率) |
g/cm3 |
g/cm3 |
|
最小 |
24.3 |
19.5 |
0.291 |
0.309 |
平均 |
82.8 |
45.3 |
0.384 |
0.409 |
最大 |
199.6 |
66.6 |
0.490 |
0.531 |
注1: ここでの用語、含水率は、乾量基準含水率Ud、
水分率は、湿量基準含水率Uw として使われており、
両者の関係は、Ud=(100*Uw)/(100-Uw)
または、 Uw=(100*Ud)/(100+Ud)
で表せる。.
注2: 容積密度Rは、全乾重量/生材体積
注3: 全乾密度R0は、全乾重量/全乾体積
注4: 重量から体積への変換係数m3/トンは、
1/((Ud/100+1)*容積密度R)
によって計算される。
表4.3.7 全乾体積を求める容積換算係数の範囲
全乾密度が平均値の場合の含水率による変動範囲
含水率 |
スギ |
ヒノキ |
カラマツ |
トドマツ |
含水率(最大) |
(199.6%) |
(121.1%) |
(70.7%) |
(100.6%) |
係数最小値 |
0.9 |
1.0 |
1.3 |
1.4 |
含水率(最小) |
(70.4%) |
(85.7%) |
(24.3%) |
(28.9%) |
係数最大値 |
1.6 |
1.2 |
1.7 |
2.2 |
* 平均値を用いた場合;
含水率 |
スギ |
ヒノキ |
カラマツ |
トドマツ |
含水率(平均) |
(123.3%) |
(98.8%) |
(47.8%) |
(61.2%) |
平均係数 |
1.27 |
1.21 |
1.55 |
1.87 |