木材チップの含水率について

 

1 平成21年度製紙用チップ等の調査報告書(抄)

含水率は1工場1樹種あたり5つのサンプルで測定し、その平均値を求めた。以下の結果はすべて5サンプルの平均値を示している。

5.2.1に丹治林業(株)で採取したチップの含水率を示す。丹治林業(株)ではカラマツ,エゾマツ・トドマツ,広葉樹の3種類のチップを採取した。それぞれの含水率の平均値は,カラマツ30.9%,エゾマツ・トドマツ50.9%,広葉樹65.9%であった。カラマツおよびエゾマツ・トドマツの含水率は低かった。

 

 

5.2.2に(株)箱崎林業で採取したチップの含水率を示す。(株)箱崎林業では,スギ,マツ,広葉樹の3種類のチップを採取した。それぞれの含水率は,スギ83.3%,マツ83.7%,広葉樹63.2%であった。広葉樹に比べてスギ、マツの針葉樹の含水率が高かった。

 

 

5.2.3に(株)佐合木材で採取した木材チップの含水率を示す。(株)佐合木材では,スギと広葉樹の2種類のチップを採取した。それぞれの含水率は,スギ97.0%,広葉樹76.3%であった。スギが高含水率であった。

 

 

 

 

5.2.4にチューモク(株)で採取した木材チップの含水率を示す。チューモク(株)では,スギと広葉樹の2種類のチップを採取した。それぞれの含水率は,スギ86.8%,広葉樹55.3%であった。

 

 

5.2.5に(株)南栄で採取した木材チップの含水率を示す。(株)南栄では港工場でヒノキのチップを,深田工場でスギとマツと広葉樹の3種類のチップを採取した。それぞれの含水率は,港工場のヒノキ74.1%,深田工場のスギ70.8%,マツ31.7%,広葉樹50.4%であった。深田工場のマツの含水率は低めであった。

 

 

採取したすべての木材チップの含水率を樹種別に平均値を求めると、1カ所でのみサンプルを採取できなかったエゾマツ・トドマツ,カラマツはそれぞれ50.9%,30.9%であり,広葉樹(5工場)は62.2%,スギ(5工場)は82.4%,マツ(2工場)は57.7%であった。

 

 

2 平成22年度製紙用チップ等の調査報告書(抄)

 

含水率は1工場1樹種あたり5つのサンプルで測定し、その平均値を求めた。以下の結果はすべて5サンプルの平均値を示している。

5.2.1に佐藤木材工業(株)で採取したチップの含水率を示す。佐藤木材工業(株)ではトドマツ、広葉樹の2種類のチップを採取した。それぞれの含水率の平均値は、トドマツ91.9 %、広葉樹70.0 %であった。

 

 

5.2.2に葛巻林業(株)で採取したチップの含水率を示す。葛巻林業(株)では、アカマツ・カラマツ、広葉樹の2種類のチップを採取した。それぞれの含水率は、アカマツ・カラマツ70.7 %、広葉樹63.8 %であった。

 

 

5.2.3に丸和林業(株)で採取した木材チップの含水率を示す。丸和林業(株)針葉樹と広葉樹の2種類のチップを採取した。針葉樹はスギ7割、ヒノキ3割程度で、マツなども含まれることもあるようである。それぞれの含水率は、針葉樹137.9 %、広葉樹58.3 %であった。針葉樹が高含水率であった。

 

 

採取した木材チップの含水率の平均値を樹種別に求めると、針葉樹は100.2 %、広葉樹は64.0 %であった。

 

 

 

 

3 平成23年度木材チップ等調査報告書(抄)

2.3 含水率測定

含水率測定用の木材チップ供給工場7社から採取した。木材チップの用途は製紙用、ボ−ド用および燃料用であった。木材チップの原料は原木、製材工場の製材側板や国内解体材であった。製紙用木材チップは納入先との取り決めにより針葉樹と広葉樹に分別されていた。

 含水率の測定は次の通り行った。各工場で採取した木材チップ試料は密封し、直ちに森林総合研究所へ送付した。測定用試料の含水率測定は次のように重量測定法(JIS Z 2101 あるいはJIS Z 7203-3)の手順で行った。まず、各社の木材チップ約1kgを電子天秤により重量測定(生材重量())を行った。次に、庫内温度105℃に設定された送風恒温器内で恒量(含水率0%)の状態を確認。そして、恒量に達した木材チップの重量測定(全乾重量())を行った。

 含水率の算出は、乾量基準含水率を以下の式(2.1)により、湿量基準含水率を式(2.2)

で行った。

    ・・・ (2.1)

    ・・・ (2.2)

 

ここに、:乾量基準の含水率(%),:湿量基準の含水率(%),:生材重量(kg),:全乾重量(kg)である。

また、乾量基準含水率から湿量基準含水率および湿量基準含水率から乾量基準含水率の変換式はそれぞれ式(2.3)および式(2.4)である。

 

     ・・・ (2.3)

 

     ・・・  (2.4)

 

ここに、:乾量基準の含水率(%),:湿量基準の含水率(%),:生材重量(kg),:全乾重量(kg)である。

 

 2.1は各調査工場の含水率測定結果である。静岡チップ工業株式会社、三基開発株式会社、亀井産業株式会社の解体材等はチップ化の山積み状態の時に雨水に曝され、煤塵の飛散を防ぐために散水を行っている等の事例が確認されたこともあり乾量基準含水率1255%(湿量基準含水率1035%)を示した。住宅解体材を原料とした廃材チップは住宅用材として長時間にわたり自然に乾燥されているため、製材品は平衡含水率に近い乾量基準含水率1217%、ボード類は812%という値が維持されていると思われるが、今回調査のチップ化工程では、含水率は上記の理由で上昇している傾向がみられた。

 株式会社ニチモク林産、三興緑化有限会社、木脇産業株式会社の製材チップや曲がり材等の原木チップ等は針葉樹で乾量基準含水率3277%(湿量基準含水率2443%)、広葉樹は乾量基準含水率5565%(湿量基準含水率3540%)であった。木脇産業株式会社の針葉樹背板は辺材部分が多いスギ材であり、チップ化工程の排出状態で試料を採取したため乾量基準含水率100%以上の含水率が予想されたが乾量基準含水率52%(湿量基準含水率34%)であった。これは、素材丸太の伐採時期、保管状態の影響およびチップ加工の際の物理的な脱水が理由として考えられる。

 製紙やボード用の木材チップは、製紙工場に納入する際に含水率を除いた状態で取引されるので、チップ工場出し原料段階の含水率値は意識されていなかった。一方、今後燃料として利用される場合は、木材チップの含水率によって発熱量が異なることから、この発熱量を品質基準とする場合には、今後、含水率値の管理が重要視されると考えられる。

 

2.1 木材チップの含水率測定値(重量測定法)

 
 

 

 

2.4 燃料チップとしての発熱量

近年、バイオマス燃料として重要視されている木材チップは、それ自体に含まれる水分によって発熱量の高低が現れる。発熱量とは、燃料の単位量1kgまたは1Nm3(0℃、1気圧)が完全に燃焼する時の熱量のことである。ここでは、木材チップを燃料として扱うことを念頭にした品質について考察した。

 

 2.4.1 木材チップと他の燃料の発熱量

2.2は湿量基準含水率および乾量基準含水率に対する発熱量(高発熱量)の関係を示している。このように木材の発熱量は一般的に4500kcal/kgを用いる。ただし、この数値は木材に水分が全く含まれていない状態における値である。木材チップの場合は、人工的に乾燥処理をしたとしても510%であるから、一般的には4000kcal/kgを現実的な値として扱うことが望ましいと思われる。参考までに、他の燃料の発熱量は、灯油11,00011500 kcal/kgA重油1000011000 kcal/kg、石炭60007000 kcal/kgである。

2.2 木材含水率に対する発熱量(高発熱量)の関係

 
 

 


            

 

2.4.2 水分を含んだ燃料チップとしての品質

木材は元々樹木であった時の樹液を多く含む。木材チップは製材側板や曲がり材や剪定木等から生産される場合に樹液である水分を蒸発乾燥させる必要がある。

木材の特性は、材内水分の蒸発乾燥過程で達する繊維飽和点(乾量基準含水率で約30%)から物理的な性能が変化する。この理由の一つに木材中の自由水がなくなることがあげられる。すなわち、液体としての水は蒸発乾燥して木材実質と化学的な結合をした水分のみの状態になる。したがって、この繊維飽和点よりも含水率が低いところに発熱量の基準が必要と思われた。

生材状態から乾燥木材チップとして生産する場合は、ある程度発熱量が得られ、生産コストも抑えられる場合を考慮し、次の判断基準を必要とすると思われた。

まず、湿量基準含水率20%(乾量基準含水率25%)未満とし、発熱量3500kcal/kgを担保できるようにする。次に湿量基準含水率30%(乾量基準含水率43%)未満とし、発熱量3000kcal/kgを担保できるようにする。そして、高含水率であり発熱量は小さいが、製品燃料チップを重量で取引する場合、単位重量当たりで木材実質よりも水分のほうが重いようなものは、品質としてよろしくないと判断し、湿量基準含水率50%(乾量基準含水率100%)未満を発熱量2000kcal/kgに基準を設ける必要があると考えられた。

このように燃料チップは含水率に対する発熱量を品質基準として扱うことが望ましいと考えられる。

 

2.4.3 湿量基準含水率および乾量基準含水率と発熱量の関係


湿量基準含水率は対象物の全重量に対する水分量の割合である。したがって、湿量基準含水率に対する発熱量((高発熱量))2.1のように直線関数の近似式(2.5)で表すことができる。一方、乾量基準含水率は木材実質の重量と水分重量の比である。したがって、乾量基準含水率に対する発熱量((高発熱量))の関係は図2.2のように指数関数の近似式(2.6)で表すことができる。

 

 

 


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