平成27年度事業計画

 

平成26年度は春の消費税増税による消費者マインドの後退が顕著に表れ、景気の足踏み状態が続いていたが、秋の日銀による意表をつく2回目の大規模金融緩和策も打ち出され、株価2万円、ドル円も120円を超える円安が進行し、今後の経済の進展、リーマンショック以来続いていたデフレからの脱却、物価2%アップのインフレ目標への到達などが見えてきたところである。  

しかしながら木材チップの主要な需要先である製紙業界などは紙利用構造の変化による需要の減退、製品輸入の増大が続き、木材チップ生産の先行きが危ぶまれているところとなっている。一方、平成24年度に施行された再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法による木質バイオマスによる発電については、100を越える多くの発電所が新しく構想され、平成27年度にはその多くが発電を開始し、大規模な木材チップ需要が生まれると見込まれる。

このような状況下で平成27年度も厳しい経済情勢が一気に回復することは期待しがたく当分は難しい情勢が続くことと思われるが、安倍政権の基でアベノミクスの3本の矢による景気の着実な回復、進展を期待したいところである。

国産チップ業界も、過去の長期に亘る円高の進行などにもより長期に厳しい経営状況が続いてきており、平成26年度も再生可能エネルギー電気の調達用原木のひっ迫などもあり、原木高の製品安傾向にあり、経営は厳しさを増している。今後についても製紙需要の大きな増加は期待できないと思われるが、昨今の円安等による外材チップから国産チップへの回帰の機運をとらえ、さらに電力固定価格買い取り制度の発足による新規需要の近年の増加などを踏まえ、国産チップの安定的な供給に努め、長期的展望のもと将来を見据えた事業展開を図ることが必要である。

このような各般の情勢を踏まえ、平成27年度は次の事項を重点的に取り組むものとする。

 

.  東日本大震災復興対策の推進

東日本大震災の被害対策及び復興対策については、東京電力原子力発電所事故による放射能被害対策もあり、震災後4年を経てもなお大きな課題が残っているが、これらの課題に対応して着実な復興の努力を続けることとする。特に、木材チップ業界に関しては樹皮の処理が大きな課題であったが、風評被害対策も含めて行政官庁とも緊密な連携をとり、木材関連の放射能基準値を徹底し、木材チップ生産の安定的な確保に資するよう努めていくこととする。

 

2 木材チップの需給と価格の安定                 

() 国産木材チップ利用の促進  

電力固定価格買い取り制度の開始など木材チップの需給動向が変化している現状を踏まえ、木材チップの利用状況や今後の動向及び林業・木材産業に関する森林・林業再生プランなど林野行政の方向を見極め、国産木材チップの利用の積極的な促進に努める。

 () チップ原材料の安定的確保

   間伐材等木材チップに供する原材料が逼迫している現状を踏まえ、今後のバイオマス発電用チップ需要の増大に対応するため、木材チップの安定的・効率的な供給体制を構築する必要があることから、素材生産業とも協力して間伐材チップなどの安定供給体制の整備に取り組む。

() 木材チップの安定的経営に資する価格の安定化

木材チップの安定的な供給体制を構築するためには、紙パルプやバイオマス利用に伴う木材チップの需要状況に対応した再生産可能な適正なチップ価格の確保が必要であり、これを実現するように努める。  

 

3.木材チップの規格化等への取り組み

  地域のバイオマス資源である木材チップを地域材として原料転換を行うための課題として木材チップの規格化及び乾燥の問題がある。これらの課題を解決するため、全国木材チップ工業連合会として、木材チップの規格を定めたところであるが、これを全国の木材チップ関係者に普及し、木材チップの生産、品質の向上、流通の安定化を図る。また、燃料用の木材チップの規格制定にも協力し、その普及に努める。

 

4.新規需要開発等の取り組み 

  木材チップ製造事業を主体として効率的な経営を展開するため木質系粗飼料、木質ペレット、湿地排水処理資材、ナノセルロース資材等の開発事業に積極的に取り組むとともに広葉樹チップ、タケ材チップなどの活用を含め、関係行政機関に対して木材チップの新たな需要開発の要請を行い、木材チップの需要開発に取り組む。

 

5.合法木材及び間伐材流通の円滑な推進

  合法木材の適切な受け入れと供給を各業種間で円滑に推進できるよう取り組むこととするとともに、違法伐採対策の強化の動きを考慮して適正な合法木材取扱事業者の認定に努める。

また、間伐材チップの確認のためのガイドラインに基づく間伐材取扱事業者の認定に努め、製紙業界などが必要とする間伐材証明の普及を促進し、製紙用間伐材チップの安定供給体制を支援し、間伐材チップの利用を積極的に進める。

 

6.木質バイオマス供給事業者の認定における事業者認定の推進

  再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度においては、木質バイオマスを提供する事業者が間伐材等由来の証明された燃料を供給することが肝要であり、このことを確保するため林野庁のガイドラインによって木質バイオマス供給事業者の認定が必要とされている。このため林野庁ガイドラインによる木質バイオマス供給事業者の認定を積極的に進め、再生可能エネルギーによる電気の供給の推進のため、木質バイオマス燃料供給体制の推進、整備に取り組むこととする。特に本年度から小規模木質バイオマス発電に優遇措置が設けられたことに鑑み、小規模な木材チップ供給についても積極的に対応できる体制の構築に努める。                                   

7.林業労働力確保対策の実施 

 (1) 林材業ゼロ災推進中央協議会の活動に参画し、労働災害の軽減に努める。

 (2) 林業退職金共済制度への加入促進を図る。

 

8.木材需給動向収集調査及び情報活動の充実 

(1) 木材チップの市況動向調査(毎月)

 (2) 全国パルプ材・チップ材の動向   

 (3) パルプ材入荷・消費・在庫速報及び実績、木材チップ輸入量等 

 (4) 木質バイオマス発電等その他の情報