平成28年度事業計画

 

我が国の経済は、アベノミクス効果により穏やかな回復傾向にあったが、年明け以降の円高や株安による景況感や消費マインドの下振れなどもあり力強さを欠いている。

平成28年度は、1月末に出された日本銀行の新たな金融政策への期待感もあり、安倍政権の下でのアベノミクスの3本の矢による景気の着実な回復、進展を期待したいところである。

さて、木材チップの重要な需要先である紙・板紙の内需はリーマンショック後に大きく落ち込みそれ以降は元の水準に回復することなく推移している。

このようななか、平成24年度に施行された再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法による木質バイオマスによる発電については、100を越える多くの発電所が新しく構想され、平成27年度にはその多くが発電を開始し、今後、大規模な木材チップ需要が生まれると見込まれている。

一方、国産材チップ業界は、長期に亘る円高の進行などを受け、また、最近の発電用原木の需給ひっ迫などもあり、経営は厳しさを増している。

今後、製紙需要の大きな増加は期待できないと思われるものの電力固定価格買い取り制度(FIT)の発足による新規需要の増加などを踏まえた国産材チップの安定的な供給に努め、長期的展望のもと将来を見据えた事業展開を図ることが必要である。

このような各般の情勢を踏まえ、平成28年度は次の事項を重点的に取り組むこととする。

 

1 東日本大震災復興対策の推進

東日本大震災の被害対策及び復興対策については、東京電力原子力発電所事故による放射能被害対策もあり、震災後5年を経てもなお大きな課題が残っているが、これらの課題に対応して着実な復興の努力を続けることが求められている。

特に、木材チップ業界に関しては樹皮の処理が大きな課題であったが、風評被害対策も含めて行政官庁とも緊密な連携をとり、木材関連の放射性物質基準値を徹底し、木材チップ生産の安定的な確保に資するよう努めていくこととする。

 

2 木質バイオマス供給事業者の認定における事業者認定の推進

  再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)においては、木質バイオマスを提供する事業者が間伐材等由来の証明された燃料を供給することが肝要であり、このことを確保するため林野庁のガイドラインによって木質バイオマス供給事業者の認定が必要とされている。

当連合会は、林野庁ガイドラインによる木質バイオマス供給事業者の認定による再生可能エネルギーによる電気の供給のため、木質バイオマス燃料供給体制の推進、整備に取り組むこととする。

なお、昨年度から未利用木材燃焼発電、2,000Kw未満の小規模木質バイオマス発電に優遇措置が設けられたことに鑑み、これらについても積極的に対応できる体制の構築に努める。

 

3 合法木材及び間伐材流通の円滑な推進

  合法木材の適切な受け入れと供給を各業種間で円滑に推進できるよう取り組むとともに、違法伐採対策の強化の動きを考慮して適正な合法木材取扱事業者の認定に努める。

また、間伐材チップの確認のためのガイドラインに基づく間伐材取扱事業者の認定に努め、製紙業界などが必要とする間伐材証明の普及を促進し、製紙用間伐材チップの安定供給体制を支援し、間伐材チップの利用を積極的に進める。

なお、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」については、木材関係団体と連携を図り情報収集等に努める。

 

4 木材チップの需給と価格の安定

() 国産木材チップ利用の促進

電力固定価格買い取り制度(FIT)の開始など木材チップの需給動向の変化や今後の動向及び林業・木材産業に関する森林・林業行政の方向を見極め、国産木材チップ利用の積極的な促進に努める。

 

 () チップ原材料の安定的確保

    間伐材等木材チップに供する原材料が逼迫している現状を踏まえ、今後のバイオマス発電用チップ需要の増大に対応するため、木材チップの安定的・効率的な供給体制を構築する必要があることから、素材生産業とも協力して間伐材チップなどの安定供給体制の整備に取り組む。

 

() 木材チップ業界の安定的経営に資する価格の安定化

木材チップの安定的な供給体制を構築するためには、紙パルプやバイオマス利用に伴う木材チップの需要状況に対応した再生産可能な適正なチップ価格の確保が必要であり、これを実現するように努める。

 

5 木材チップの規格化への取り組み

  木材チップはこれまで統一的な規格が定められておらず、今後木材チップ需要の多角化が見込まれるなかで、従来の個別的な基準等では対応が難しい面が生じることが憂慮されている。当連合会として、これらの課題を解決するため、木材チップの規格を定めたところであるが、これを全国の木材チップ関係者に普及し、木材チップの生産、品質の向上、流通の安定化を図る。

 

6 新規需要開発への取り組み                      

木材チップ製造事業を主体とした効率的な経営を展開するため、木質系粗飼料、木質ペレット、湿地排水処理資材、ナノセルロース資材等の開発事業に積極的に取り組むとともに広葉樹チップ、タケ材チップなどの活用を含め、関係行政機関に対して木材チップの新たな需要開発の要請を行うなど、木材チップの需要開発に取り組む。

 

7 林業労働力確保対策の実施                  

(1) 林材業ゼロ災推進中央協議会の活動

当連合会は林業部会及び木材・木製品部会の委員として参画し、労働災害

の軽減に各団体と協力して取り組む。

 

(2) 林業退職金共済制度への加入促進

独立行政法人勤労者退職金共催機構が行う林業退職金共済への加入促進を

図る。

 

 

 

8 木材需給動向収集調査及び情報活動の充実

1)木材チップの市況需給動向調査(毎月)

 (2)全国のパルプ材・チップ価格(農林水産省統計情報部)

 (3)パルプ材入荷・消費・在庫速報及び実績、木材チップ輸入量

(日本製紙連合会、経済産業省、財務省通関統計)

 (4)需要開発に関する資料収集と情報

 (5)労働災害発生状況に関する情報

 (6)木質バイオマス情報の収集・提供

  (7) 免税経由使用状況調査(林野庁指示による各事業者への照会、集計、報告)


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