平成29年度事業計画

 

平成 28年度の我が国経済は、アベノミクスの取組の下、雇用・所得環境が改善し、緩やかな回復基調が続いている。第四四半期(1月〜3月)の国内総生産は5四半期連続のプラス成長となった。これは、輸出主導の外需の寄与とともに個人消費が持ち直したことによる。

国は、昨年8月に、デフレから完全に脱却し、しっかりと成長していく道筋をつけるため、「未来への投資を実現する経済対策」を取りまとめところであり、雇用・所得環境の改善が続く中、経済対策等の効果も相まって、民需を中心とした更なる景気回復が期待される。

さて、木材チップの重要な需要先である紙・板紙の内需はリーマンショック後に大きく落ち込みそれ以降は元の水準に回復することなく推移している。

一方、国産材チップ業界は、長期に亘る円高の進行などを受け、また、最近の発電用原木の需給ひっ迫などもあり、経営は厳しさを増している。

今後、木材チップは製紙需要の大きな増加は期待できないと思われるものの木材自給率50パーセント達成、電力固定価格買い取り制度(FIT)やセルロ―スナノファイバ―(CNF)など新規需要の増加などを踏まえた国産材チップの安定的な供給に努め、長期的展望のもと将来を見据えた事業展開を図ることが必要である。

このような各般の情勢を踏まえ、平成29年度は次の事項を重点的に取り組むこととする。

 

1 東日本大震災復興対策の推進

東日本大震災の被害対策及び復興対策については、東京電力原子力発電所事故による放射能被害対策もあり、震災後6年を経てもなお大きな課題が残っているが、これらの課題に対応して着実な復興の努力を続けることが求められている。

特に、木材チップ業界に関しては樹皮の処理が大きな課題であったが、風評被害対策も含めて行政官庁とも緊密な連携をとり、木材関連の放射性物質基準値を徹底し、木材チップ生産の安定的な確保に資するよう努めていくこととする。

 

2 木質バイオマス供給事業者の認定における事業者認定の推進

  再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)においては、木質バイオマスを提供する事業者が間伐材等由来の証明された燃料を供給することが肝要であり、このことを確保するため林野庁のガイドラインによって木質バイオマス供給事業者の認定が必要とされている。

当連合会は、林野庁ガイドラインによる木質バイオマス供給事業者の認定による再生可能エネルギーによる電気の供給のため、木質バイオマス燃料供給体制の推進、整備に取り組むこととする。

なお、一昨年度から未利用木材燃焼発電、2,000Kw未満の小規模木質バイオマス発電に優遇措置が設けられたことに鑑み、素材生産事業者との連携による供給体制構築に努める。

 

3 合法木材及び間伐材流通の円滑な推進

  今年5月に施行された「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリ―ンウッド法)」については、その適切な運用が図られるよう木材関係団体と連携に努める。

また、クリ―ンウッド法の施行に伴い、合法木材の適切な受け入れと供給を各業種間で円滑に推進できるよう取り組むとともに適正な合法木材取扱事業者の認定に努める。

引き続き、間伐材チップの確認のためのガイドラインに基づく間伐材取扱事業者の認定に努め、製紙業界などが必要とする間伐材証明の普及を促進し、製紙用間伐材チップの安定供給体制を支援し、間伐材チップの利用を進める。

 

4 木材チップの需給と価格の安定

() 国産木材チップ利用の促進

電力固定価格買い取り制度(FIT)の開始、セルロースナノファイバー(CNF)資材など木材チップの需給動向の変化や今後の動向及び林業・木材産業に関する森林・林業行政の方向を見極め、国産木材チップ利用の積極的な促進に努める。

 

 () 木材チップ原材料の安定的確保

    間伐材等木材チップに供する原材料が逼迫している現状を踏まえ、今後の木質バイオマス発電用チップ需要の増大に対応するため、木材チップの安定的・効率的な供給体制を構築する必要があることから、素材生産業とも協力して間伐材チップなどの安定供給体制の整備に取り組む。

 

() 木材チップ業界の安定的経営に資する価格の安定化

木材チップの安定的な供給体制を構築するためには、紙パルプやバイオマス利用に伴う木材チップの需要状況に対応した再生産可能な適正なチップ価格の確保が必要であり、これを実現するように努める。

 

5 木材チップの規格化への取り組み

  木材チップはこれまで統一的な規格が定められておらず、今後木材チップ需要の多角化が見込まれるなかで、従来の個別的な基準等では対応が難しい面が生じることが憂慮されている。当連合会として、これらの課題を解決するため、木材チップの規格を定めたところであるが、これを全国の木材チップ関係者に普及し、木材チップの生産、品質の向上、流通の安定化を図る。

 

6 新規需要開発への取り組み                      

木材チップ製造事業を主体とした効率的な経営を展開するため、木質系粗飼料、木質ペレット、湿地排水処理資材、セルロースナノファイバー(CNF)資材等の開発事業に積極的に取り組むとともに広葉樹チップ、竹材チップなどの活用を含め、関係行政機関に対して木材チップの新たな需要開発の要請を行うなど、木材チップの需要開発に取り組む。

 

7 林業労働力確保対策の実施

(1)  林材業ゼロ災推進中央協議会の活動

当連合会は林業部会及び木材・木製品部会の委員として参画し、労働災害の軽減に各団体と協力して取り組む。

 

(2)  林業退職金共済制度への加入促進

独立行政法人勤労者退職金共催機構が行う林業退職金共済への加入促進を図る。

 

 

 

8 会員・賛助会員の加入促進

  当連合会の組織力向上を図っていく上で、会員・賛助会員の加入促進を図ることは重要である。このため、会員、賛助会員の加入促進が図られるよう、組織を挙げて取り組む。

 

9 木材需給動向収集調査及び情報活動の充実

1)木材チップの市況需給動向の調査・提供(毎月)

 (2)全国のパルプ材・チップ価格の収集・提供(毎月、農林水産省統計情報部)

 (3)パルプ材入荷・消費・在庫速報及び実績及び木材チップ輸入量の収集・提供

       (毎月、日本製紙連合会、経済産業省、財務省通関統計)

 (4)木質バイオマス情報の収集・提供(随時)

 (5)需要開発に関する情報収集・提供(随時)

 (6)労働災害発生状況に関する情報収集・提供(随時)

  (7) 免税経由使用状況調査(林野庁依頼による各事業者への照会、集計、報告)


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