外国の樹木についての質問とお答え


 萝卜树 投稿者:YT  投稿日:12月20日(金)15時38分29秒

中国の材木で、萝卜树(LUO BO SHU)ってゆう木があるのですが、学名では何の木でしょうか?聞く所によると、反り返りが少なく、軽い木材らしいんですが・・・?


 Luobo shu 投稿者:後藤 武夫  投稿日:12月24日(火)12時38分10秒

 
  職場にある中国樹木志で調べましたところ、お尋ねの木は、 ヤマモガシ(Proteaceae)科のヤマモガシ(Helicia)属の  Helicia kwangtungensis という種ではないかと思います。
中国での一般名は、広東山竜眼と言い、お尋ねの(似た漢字で表しますが)夢ト樹は、 広東地方で言われる地方名のようです。夢トは、ダイコンの意味ですね。
ですからダイコンノキという意味です。(正しくは夢という字からワを抜いた字ですが。)
 樹高10m程度。葉は、倒卵形で先が急に尖り、堅紙質です。
花は淡い黄色。堅果は紫黒色でデンプンが多く、煮て食用にし、酒を醸造し酒粕は餌にします。
材は農具などに使われるようです。
 広西の東南部、広東、江西の南部、福建の西部の海抜400−800mの闊葉樹林の中に 生育します。
 日本には同属のヤマモガシ Helicia cochinchinensis が分布しますが、
お尋ねの樹種は分布していませんので、いわゆる和名はないと思います。
中国名どおり、カントンヤマリュウガンとかカントンヤマモガシと
呼ばれたらどうでしょうか。

Helicia kwangtungensis

ヤマモガシ1

ヤマモガシ2


夢ト樹の訂正 投稿者:後藤 武夫  投稿日: 1月 7日(火)22時19分42秒

 YTさんから、夢(からワを取った字)ト樹について、12月24日に お答えしたヤマモガシ(Proteaceae)科のヤマモガシ(Helicia)属の  Helicia kwangtungensis を中国に問い合わせたところ、どうも違うようだとメールがありました。
 再度、中国樹木志を詳しく調べましたら、樹木志 の2巻に、やはり江西省での地方名で 同名の夢(ーワ)ト樹 が出ていました。
 こちらは、エゴノキ(Styracaceae)科の Alniphyllum 属の Alniphyllum fortunei 赤楊葉 を指します。
(中国一般には、赤楊葉と言い、江西省での地方名を夢(ーワ)ト樹と言うようです。)
 落葉高木で樹高20mに達し、樹皮は灰褐色、細く裂ける。
葉は楕円形、先が尖る。 白または微紅色の花を3,4月に咲かす。
実は、長円形で10、11月に褐色に熟す。
長江の南、海南島から四川、雲南の海抜1500m以下の 山地の闊葉樹林に生える。
インド、ベトナム、ミャンマーにも分布する。
成長がダイコンのように早いのでダイコンノキという 江西の地方名が付いたそうです。

 日本には、同じ科のエゴノキ科のエゴノキStyrax japonicaは 分布しますが、このAlniphyllum 属の木はありませんので、 和名はないと思います。

 漢字の楊は、ハコヤナギやドロノキ、ヤナギ類を指す漢字ですので、 漢字名の意味は、ドロバアカノキ、もしくはアカヤナギバノキというような意味です。
(ただし、アカギというのは全く別な木がありますので、訳としては適当ではないと思います。 むしろドロバエゴ(ノキ)などの方が、植物学的には良い訳だと思いますが、いずれこう訳しても 日本人はだれもどんな木かわからないとは思います。)
また、中国で樹木に使う漢字と日本での樹木名の漢字が必ずしも 同じものを指さないので、しばし混乱します。

Alniphyllum fortunei
Alniphyllum fortunei 2
筑波実験植物園
小石川植物園

  前の学名 Helicia Kwangtungensis の木も江西省の南部に分布しているとありますし、 やはり、夢(ーワ)ト樹という地方名で呼ばれますので、 名前だけから判断するのは難しく、私にはどちらかははっきり判断できませんが。


 なお、中国の主な樹種の中国名を挙げておきます。

中国の樹種名



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