発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン

 

                      平成24年6月

                      林  野  庁

 

1 趣旨

 

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号)に基づく平成24年6月18日経済産業省告示第139号(以下「告示」という。)において、再生可能エネルギー発電設備の区分ごとの調達価格等が定められ、木質バイオマスについても、告示の表第12号に掲げる「森林における立木竹の伐採又は間伐により発生する未利用の木質バイオマス(輸入されたものを除く。)」(以下「間伐材等由来の木質バイオマス」という。)を電気に変換する設備、同表第13号に掲げる「木質バイオマス」(以下「一般木質バイオマス」という。)を電気に変換する設備、同表第14号に掲げる「建設資材廃棄物」(以下「建設資材廃棄物」という。)を電気に変換する設備について、それぞれの区分ごとに調達価格等が定められたところである。

 この区分の下では、間伐材等由来の木質バイオマス、一般木質バイオマスについて適切な識別・証明が行われなければ、調達価格が適正に適用されない事態も懸念される。また、木質バイオマスについては、間伐材等から大量に発生する一方で、既に相当部分が製材、合板、木質ボード、製紙用等に供されていることから、このような既存利用に影響を及ぼさないよう適切に配慮していく必要がある。

 本ガイドラインは、このようなことを踏まえ、再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度に対する消費者の信頼を確保するとともに、発電の燃料としての間伐材等由来の木質バイオマスや一般木質バイオマスが、円滑に、かつ、秩序をもって供給されることに資するよう、これらの供給者が、間伐材等由来の木質バイオマスや一般木質バイオマス由来であることの証明に取り組むに当たって留意すべき事項等を取りまとめたものである。

 

2 定義

 

 本ガイドラインにおける間伐材等由来の木質バイオマス、一般木質バイオマス及び建設資材廃棄物は、次のとおりとする。なお、本ガイドラインでいう木材には、竹由来のものを含む。

 

(1)間伐材等由来の木質バイオマス

     間伐材等由来の木質バイオマスとは、次のいずれかに由来するバイオマスをいう。

  @ 間伐材

 森林の健全な育成のため、うっ閉し立木間の競争が生じ始めた森林において、材積に係る伐採率が35%以下であり、かつ、伐採年度から起算しておおむね5年後において再びうっ閉することが確実であると認められる範囲内で行われる伐採により発生する木材を間伐材といい、除伐(うっ閉する前の森林において目的樹種の成長を阻害する樹木等を除去し目的樹種の健全な成長を図るために行う伐採をいう。)によるものを含む。

 A @以外の方法により伐採された木材

  @以外の方法により次のいずれかの森林(伐採後の土地が引き続き森林であるものに限る。)から、森林に関する法令に基づき適切に設定された施業規範等に従い、伐採、生産される木材をいう。

ア 森林法(昭和26年法律第249号)第11条第5項の認定を受けた森林経営計画(森林法の一部を改正する法律(平成23年法律第20号)附則第8条の規定によりなお従前の例によることとされた森林施業計画を含む。以下「森林経営計画」という。)の対象森林

イ 森林法第25条又は第25条の2の規定により指定された保安林及び同法第41条の規定により指定された保安施設地区の区域内の森林(以下「保安林等」という。)

ウ 国有林野管理経営規程(平成11年農林水産省訓令第2号)第12条第1項の国有林野施業実施計画及び公有林野等官行造林法施行手続(昭和30年農林省訓令第11号)第6条第1項の公有林野等官行造林地施業計画の対象森林

 

(2)一般木質バイオマス

    一般木質バイオマスとは、間伐材等由来の木質バイオマス及び建設資材廃棄物以外の木質バイオマスであって、次の木材等に由来するバイオマスをいう。

  @ 製材等残材

    木材の加工時等に発生する、端材、おがくず、樹皮等の残材

  A その他由来の証明が可能な木材

   製材等残材以外の木材であって、由来の証明が可能なもの

 

(3)建設資材廃棄物

    建設資材廃棄物とは、告示の表第14号の建設資材廃棄物をいう。

 

3 間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの証明

 

  間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの証明は、当該バイオマスの伐採を行う者又は加工・流通を行う者(以下「取扱者」という。)が、次の流通工程の関係事業者に対して、その納入する木質バイオマスが間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることが証明されたものであり、かつ、分別管理されていることを証明する書類(証明書)を交付することとし、それぞれの納入ごとに証明書の交付を繰り返すことにより行うこととする。

  なお、販売先に対して交付した証明書の写し、仕入先から交付された証明書その他の関係書類を少なくとも5年間保管することとし、その証明の根拠について、販売先等から求められた場合は、関係書類等を提示できるようにしておく必要がある。

 

(1)間伐材等由来の木質バイオマスの証明

  @ 証明を要する場面

 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度において、間伐材等由来の木質バイオマスを発電に利用する場合は、当該バイオマスについて、伐採段階及び加工・流通段階で以下の証明を必要とする。

   ア 伐採段階

 伐採を行う者は、間伐材等由来の木質バイオマスの販売先に対し、販売する木質バイオマスが全て間伐材等由来の木質バイオマスであることを証明する証明書を交付する必要がある。

 なお、間伐材等由来の木質バイオマス及びそれ以外に由来するバイオマスの両方を取り扱う者は、上記の証明にあたって、両者を分別管理するとともに、これが確実に行われていることを明らかにする必要がある。

   イ 加工・流通段階

 @の証明書を交付された間伐材等由来の木質バイオマスの加工・流通を行う者は、自らが加工・流通する全過程を通じて、間伐材等由来の木質バイオマスであることが証明されたものと、それ以外に由来するバイオマスとを分別管理するとともに、販売先に対して、販売する木材が間伐材等由来の木質バイオマスであることを証明する証明書を交付する必要がある。

A 証明書

 上記@の証明書には、販売する木材が間伐材等由来の木質バイオマスである旨を記載するとともに、当該木材の販売先、数量等基礎的な情報を記載する必要がある。伐採段階における証明書には、伐採箇所、伐採面積等についても記載する。なお、表示方法等の例は、別記1及び別記2−1のとおりとする。

 なお、証明書については、証明に必要な事項を納品書等に記載すること、又は証明に必要な事項が記載されている既存の書類の写しを納品書等に添付することをもって代えることができる(別記2−2参照。)。

 

(2)一般木質バイオマスの証明

  @ 証明を要する場面

 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度において、一般木質バイオマスを発電に利用する場合は、当該バイオマスについて、伐採段階及び加工・流通段階で以下の証明を必要とする。

   ア 製材等残材

  (ア) 原木の伐採段階

製材等に用いる原木を供給する者は、原木の販売先に対し、その原木が全て間伐材等由来の木質バイオマスであること又は一般木質バイオマス(その他由来の証明が可能な木材)であることを証明する証明書を交付することが必要である。また、それらとそれら以外のバイオマスの両方を取り扱う者は、上述の証明にあたって、両者を分別管理するとともに、これが確実に行われていることを明らかにする必要がある。

  (イ) 製材等の段階

製材工場等は、(ア)の証明書を交付された原木を加工し製材等残材が生じる全過程、また製材工場等自らが製材等残材よりチップを製造する場合はこれも含めた全過程を通じて、原木が全て間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることが証明される製材等残材と、それら以外のバイオマスが混じらないよう分別管理するとともに、販売先に対して、販売する木質バイオマスが一般木質バイオマスであることを証明する証明書を交付する必要がある。

  (ウ) 加工・流通段階

(イ)の証明書を交付された一般木質バイオマスの加工・流通を行う者は、自らが加工・流通する全過程を通じて、一般木質バイオマスであることが証明されたものと、それ以外に由来するバイオマスとを分別管理するとともに、販売先に対して、販売する木質バイオマスが一般木質バイオマスであることを証明する証明書を交付する必要がある。

   イ その他由来の証明が可能な木材

    (ア) 森林からの伐採木材

 「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(平成18年2月)(以下(ア)において「ガイドライン」という。)に基づき分別管理するとともに、木質バイオマスの販売先に対して、ガイドラインに基づき一般木質バイオマスであることを証明する証明書を交付することとする。

  (イ) 伐採届等を必要としない木材等

 屋敷林など法令による伐採に係る手続が不要の立木、果樹等の剪定枝、ダム流木等については、伐採を行う者又はそれらの所有者自らが由来の証明書(所有者名、住所、樹種、数量、建設資材廃棄物が混入していないこと、法規制が無く適切に伐採した場合はその旨等を記述)を作成し、これら木質バイオマスの販売先に交付することとする。

  A 証明書

   ア 製材等残材

@ア(ア)の原木の伐採段階の証明書には、その原木が全て間伐材等由来の木質バイオマスであること又は一般木質バイオマスであること及び当該原木の販売先、数量等基礎的な情報を記載するとともに、伐採箇所、伐採面積等についても記載する。この場合の表示方法等の例は、間伐材等由来の木質バイオマスについては別記1、その他由来の証明が可能な木材であって森林からの伐採木材由来の一般木質バイオマスについては別記1−1、伐採届等を必要としない木材等由来の一般木質バイオマスについては、別記1−2のとおりとする。

@ア(イ)の製材等の段階の証明書については、数量、事業者名及び認定番号等((3)@にて後述。)並びに販売先のほか、製材等残材の原木が全て間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマスであることを記載することとし、表示方法等の例は、別記2−3のとおりとする。

@ア(ウ)の加工・流通段階の証明書は、数量や販売先などの情報を記載することとし、表示方法等の例は、別記2−4のとおりとする。

なお、証明書については、証明に必要な事項を納品書等に記載すること、又は証明に必要な事項が記載されている既存の書類の写しを納品書等に添付することをもって代えることができる(別記2−2参照。この場合、「間伐材等由来の木質バイオマス」を「一般木質バイオマス」と読み替えることとする。)。

   イ その他由来の証明が可能な木材

    (ア) 森林からの伐採木材

 @イ(ア)の伐採段階における証明書には、当該木材の販売先、数量等基礎的な情報を記載するとともに、伐採箇所、伐採面積等についても記載する。証明書の表示方法等の例は、別記1−1のとおりとする。

 加工・流通段階については、数量や販売先などの情報を記載することとし別記2−4のとおりとする。なお、証明書については、証明に必要な事項を納品書等に記載すること、又は証明に必要な事項が記載されている既存の書類の写しを納品書等に添付することをもって代えることができる(別記2−2参照。この場合、「間伐材等由来の木質バイオマス」を「一般木質バイオマス」と読み替えることとする。)。

  (イ) 伐採届等を必要としない木材等

 @イ(イ)の発生段階における証明書には、当該木材の販売先、数量等基礎的な情報を記載するとともに、発生場所、樹種等についても記載する。証明書の表示方法等の例は、別記1−2のとおりとする。

 加工・流通段階については、数量や販売先などの情報を記載することとし別記2−4のとおりとする。なお、証明書については、証明に必要な事項を納品書等に記載すること、又は証明に必要な事項が記載されている既存の書類の写しを納品書等に添付することをもって代えることができる(別記2−2参照。この場合、「間伐材等由来の木質バイオマス」を「間伐材等由来の木質バイオマス又は一般木質バイオマス」と読み替えることとする。)。

 

 

(3)適正な運用の在り方

 @ 自主行動規範の策定

 森林・林業・木材産業関係団体及び発電の燃料として木質バイオマスを供給する事業者の団体等(以下「団体等」という)は、発電事業者の判断に必要な情報を提供する観点から、証明のなされた間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの分別管理や書類管理の方針についての自主行動規範を策定する。ただし、森林所有者(森林所有者であって、木質バイオマスの伐採、加工・流通を業として営まないものに限る。)及び(2)@イ(イ)の伐採届等を必要としない木材等の所有者(当該木質バイオマスの発生段階の所有者に限る。)については、この限りでない。

 自主行動規範においては、間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスであることが証明された木質バイオマスの供給に取り組む団体等の構成員について、その取組が適切である旨の認定等を行う仕組み(例えば、分別管理体制や文書管理体制の審査・認定、実績の報告・公表、立入検査、認定の取消等)を定め、公表することとする。自主行動規範の例は、別記3のとおりとする。

 各取扱者が交付する間伐材等由来の木質バイオマスの証明書及び一般木質バイオマスの証明書には、当該取扱者が団体等の評価・認定を受けていることを特定できる情報(認定番号等)を記載することとする。

 なお、団体等の構成員ではない企業等が、独自に自主行動規範を定めこれに基づき証明を行う場合には、団体等による立ち入り検査等に代わり、第三者の監査を受けるなど、団体等の認定を得て事業者が行う証明方法と同等のレベルで信頼性が確保されるよう取り組む必要がある。

 

 A 分別管理

 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度においては、発電燃料として使用するバイオマス発電のバイオマス比率を正確に算定できる管理体制を整備する必要がある。このため、木材の伐採から、木質チップ等に加工されて発電施設での利用に至るまで、間伐材等由来の木質バイオマス、一般木質バイオマス及びその他のバイオマスがそれぞれ混じらないよう管理を行う必要がある。

 ただし、特定の木質チップ等のロットについて、間伐材等由来の木質バイオマスに係る証明書又は一般木質バイオマスに係る証明書等によりこれらの比率が証明され、かつ、他と混じらずに、全て一つの発電施設に出荷されることが明らかである等、発電施設におけるバイオマス比率を正確に算定できる場合にあっては、間伐材等由来の木質バイオマス、一般木質バイオマス及びその他の木質バイオマスを、混合して取り扱うこととして差し支えない。

 

 

4 留意事項

 

 木質バイオマス発電の燃料として供給される間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの証明にあたっては、これら木質バイオマスが、木材の品質及び集材コスト等の面から、従来であれば林内に放置等されていたものであること、既存利用に影響を及ぼさないよう適切に配慮していく必要があること等に十分留意することとする。

 

 

5 経過措置

 

(1)証明の方法に関する事項

 本ガイドラインの施行前に伐採され、施行時点で発電事業者又は木質バイオマスの供給者が所有している間伐材等由来の木質バイオマス及び一般木質バイオマスの証明については、これらの木質バイオマスを所有している者が、本ガイドライン3(1)及び(2)に定める方法又は「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(平成18年2月)若しくは「間伐材チップの確認のためのガイドライン」(平成21年2月)に定める方法により由来を証明するとともに、本ガイドラインの施行時点で当該木質バイオマスを所有していたことを証明書に記載することとする。

 

 

(2)自主行動規範に関する事項

 本ガイドラインの施行時に存在する団体等は、平成24年9月1日までに、本ガイドライン3(3)@の自主行動規範を策定するものとする。この場合において、当該自主行動規範が策定されるまでの間の証明については、本ガイドラインの施行から当該自主行動規範の策定までの間に当該証明に係る木質バイオマスを所有していたことを証明書に記載することとし、本ガイドライン3(3)@の規定による証明書への認定番号等の記載は、要しない。


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