はじめに

わが国の木材(用材)需給量の約50%を占めるパルプ・チップは、その7割が海外原料に依存している。国内需要のパルプ・チップは製紙原料、木質ボ−ド原料などのマテリアル利用に仕向けられているが、近年では化石エネルギ−の代替としてチップ自体の燃料化やエネルギ−変換技術による液体燃料化からサ−マル利用への途が拓かれてきている。

一方、現状では世界的な景気後退により紙需要は伸び悩んではいるが、中長期的には、新興国の経済成長に伴う紙需要の高まりも予想され、パルプ・チップの需給がタイト化するともいわれ、海外資源に大きく依存しているわが国では原料の安定的な確保とともに為替問題や価格上昇への不安感もある。このような情勢下で、国内の需要産業界では、国内の未利用材、低位利用材の取込から国産材の利用率を高めていこうとする検討が進められてきている。

 このような背景下で国内では、各省庁、産業界あげて化石燃料からバイオマス燃料への利用促進策、低炭素社会の構築への取組のほか、林野庁ではCO吸収源としての森林の諸機能の向上を狙いに、平成19年から6年間で330haの間伐実施計画を打ち出している。特に間伐事業の促進には、間伐材の利用拡大への取り組みを併行して進めなければならないが、その大きな柱は間伐材のチップ利用にある。

 この間伐材のチップ利用拡大に対して林野庁では、平成21年度に「製紙用間伐チップの安定供給支援事業」を公募事業として予算化したところであり、当工業連合会では、本事業に応募して採択され、実施主体として製紙用チップ・チップ用原木の安定取引普及事業と製紙用間伐材チップの安定供給体制整備事業の2課題に取り組んできた。

 本報告書は、上記2課題のうち、製紙用チップ・チップ用原木の安定取引事業の実施成果を取り纏めたものである。この事業は、チップ原木及びチップの現実の取引で不透明な部分が多い検量分野について、先ずその実態調査を踏まえて問題点の摘出とその改善方向の課題を明確にし、次ぎに検量の基礎となる原木及びチップの形状・質量に関する科学デ−タの収集と分析を行い、関係者に提供すること狙いにおいて実施してきた。

 本事業の計画・実施の実施に当たり、終始ご指導を賜った各委員並びにアンケ−ト調査及び実査でご協力を頂いたチップ業界、チップ受入調査で情報提供頂いた紙パ業界に厚く感謝致すとともに、本報告書が関係各位の業務の指針として利用されることを期待している。

 

平成223

全国木材チップ工業連合会

会 長 岩 切  好 和

製紙用チップ・チップ用原木の安定取引普及事業

調査・分析事業報告書

 

目  次

 

 はじめに

1.木材チップの需給動向と国産チップの生産・取引構造

 1.1 木材チップの需給動向

 1.2 国産チップの生産構造

  1.2.1 国内のチップ工場概要

  1.2.2 チップ工場の原料調達

  1.2.3 チップ生産状況

1.3 チップの販売と取引状況

 1.3.1 チップの販売方法と取引条件

 1.3.2 チップ取引先と納入量

1.4 取引先とのチップ検量方法・納入単価決め

 1.4.1 検量方法について

 1.4.2 納入単価決めについて

 1.4.3 チップの取引価格

2.間伐材チップの生産と取引実態 〜チップ工場の事例調査から〜

2.1 丹治林業株式会社<北海道>

2.2 株式会社 箱崎林業<福島県>

2.3 株式会社 佐合木材<岐阜県>

2.4 チューモク株式会社<富山県>

2.5 株式会社 南栄<熊本県> 

2.6 調査5事例のまとめ

3.間伐材チップの受け入れ実態 〜製紙工場の事例調査〜

3.1 事例1 A工場<北海道>

3.2 事例2 B工場<愛知県>

3.3 事例3 C工場<富山県>

3.4 事例4 D工場<熊本県>

3.5 調査4事例のまとめ

4.チップ用原木の形質

4.1 はじめに

4.2 測定項目、測定方法

4.3 結果

5.チップ品質

5.1 チップの採取

5.2 チップの含水率

5.3 チップの品質

5.4 チップの粒子径分布

 

(付)

 1 協議会委員名簿

 2 専門委員名簿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1.木材チップの需給動向と国産チップの生産・取引の構造

 

1.1 木材チップの需給動向

最近のわが国における木材チップの年間利用量は約2,000BDTBDT:絶乾重量、容積換算で約3,700万㎥)前後で推移しており、その約90%は製紙用パルプの原料に仕向けられ、それ以外では、繊維板・パ−ティクルボ−ド原料に67%、ボイラ燃料に約3%、家畜敷き料等に2%程度が仕向けられている。

チップは、製造方法により刃物で加工した切削チップとハンマ−やシュレッダ−で砕いた破砕チップに大きく分けられ、製造されたチップは、当然、両者間で形状や品質に違いがあり、したがって価格差もある。パルプ用チップはサイズや品質が他の用途よりも重視されるため、原材料には原木や製材脊板等を用いた切削チップが主に使用される。またボ−ド用には切削チップのほか、建築解体材や使用済みの土木資材、梱包資材、パレット等、いわゆる廃木材を原材料にした破砕チップの使用も多く、燃料用は主に種々雑多な廃木材からの破砕チップが用いられている。後述するが、パルプやボ−ド原料のチップはこれまで70%以上が海外産であるが、燃料用は国産が主体である。ここでは、原木や製材端材等を原材料とする切削チップを主体にして、その需給動向からそこでの特質と問題点についてふれることにする。

わが国のチップ需給関係を時系列的に把握できる公的な統計は存在しないため、ここでは別統計で示される国内生産量と輸入量を加えて総供給量と見なし、需要量のうちボ−ド用は推定量で表すことにした。このような手順を踏んで最近5年間の需給量の推移を示したものが1.1.1である。                     

 

1.1.1  木材チップ需給の推移

                             (単位:千BDT

年次

  

   

総量

国産チップ

輸入チップ

パルプ用

ボ−ド用

H16

19,756

5,782

13,974

18,820

1,334

17

20,116

6,005

14,111

17,551

1,262

18

19,673

5,899

13,774

17,277

1,365

19

20,229

5,894

14,335

18,999

1,717

20

20,518

5,797

14,721

19,303

1,432

    資料:供給量は農林水産省「木材需給報告書」、「木材統計」による。需要量のパルプ用

は財務省「貿易統計」、ボ−ド用は日本繊維板工業会会員分のみ、但し19年以降

18年の生産量とチップ消費量から求めた推定値である。

総供給量は平成16年の1,976BDT17年に2,000BDT台に一時増加したが、18年には1,967BDTと前年を若干下回り、1920年には再び2,000BDT台を維持してきた。このような中で、この5年間、総供給量に占める国産チップと輸入チップの構成割合は、30%対70%であること、また需要ではパルプ用が総供給量の90%以上を占めていること、いずれも殆ど変化なく推移している。

上記のように、総供給量に占める国産チップは、この5年間、構成割合で30%と殆ど変化なく推移しているが、いま、原材料別生産量を基礎にしてどのようなチップが供給されているかを1.1.2から概観する。

 

1.1.2  国産チップの原材料別生産量

(単位:千BDT、括弧%)

年次

総量

原材料区分

樹種別

原 木

工場残材

林地残材

解体材等

針葉樹

広葉樹

H16

5,782

(100.0)

2,139

(37.0)

2,198

(38.0)

58

(1.0)

1,388

(24.0)

2,938

(66.9)

1,456

(33.1)

17

6,005

(100.0)

2,235

(37.2)

2,188

(36.6)

67

(1.1)

1,515

(25.2)

2,952

(65.7)

1,538

(34.3)

18

5,899

(100.0)

2,276

(38.6)

2,275

(38.6)

66

(1.1)

1,282

(21.7)

3,004

(65.1)

1,613

(34.9)

19

5,894

(100.0)

2,368

(40.2)

2,182

(37.0)

100

(1.7)

1,244

(21.1)

3,087

(66.4)

1,563

(33.6)

20

5,797

(100.0)

2,676

(46.2)

1,913

(33.0)

104

(1.8)

1,104

(19.0)

2,918

(62.2)

1,775

(37.8)

 資料:農林水産省「木材需給報告書」及び「木材統計」

 注1.工場残材には製材脊板等の工場端材等、林地残材には除間伐材等、解体材等に土木・輸送資材など廃木材を含む。

  2.樹種別は解体材等を除外した。

 

国産チップの原材料には原木と製材等木材工場の残廃材、林地残材、解体材・廃木材に区分されるが、生産量では原木チップが最も多く、次いで工場残材チップ、解体材・廃材チップ、林地残材チップの順になり、最近数年間の傾向としては原木利用のチップへ比重が高まり、工場残材利用のチップが相対的に減少している。このことは、この5年間ほど毎年500工場近く減少し続けている製材工場数の変化に大きく起因している。つまり工場残材のチップは、その殆どが製材脊板や端材を利用したもので、長引く国内製材業の経営不振から惹起した工場閉鎖や生産規模の縮小に伴って、製材生産に付随したチップ生産の減少によるものである。                     

ともあれ、20年の国産チップ生産量580BDTは、原木利用が46%、工場残材利用が33%、解体材等廃材利用が19%、林地残材利用が2%程度の構成で生産されており、解体材等廃木材を除いたチップでは、針葉樹利用が62%、広葉樹利用が38%のウエイトで生産されている。なお国産チップの生産で針葉樹が6割を占めることは、原木利用ではスギ等除間伐材のほか、低質アカマツ丸太が仕向けられていること、また工場廃材の利用では、その主体を占める製材工場ではスギ等を原料とするものが広葉樹を原料とするものが多いという実態を反映している。

 

一方、総供給量の約70%を占める輸入チップは、わが国の製紙会社が商業ベ−スで産地国の木材会社やシッパ−と長期契約により手当するものと、製紙会社が保有する現地のチップ工場から受入れするものから成る。また輸入チップには、現地の製材工場の残材を利用したものと、パルプ用造林木を利用したものがあり、前者は北米西海岸に立地する大型針葉樹製材工場の脊板チップで代表されるし、後者はオ−ストラリアや南アフリカ、南米や東南アジア諸国でパルプ用として植林した早生樹を利用した原木チップで代表される。

最近5年間のチップ輸入量(通関量)は、1.1.3のように、年間2,5002,600BDTと示され、このうち針葉樹が約25%、広葉樹が75%前後である。この構成割合は、上述した国産チップの場合、針葉樹約60%、広葉樹約40%となっているのに比べると、広葉樹の比重がかなり高い。このことは、輸入広葉樹チップは早生樹のユ−カリやアカシアなど、パルプ用造林木を利用したものが主体になっているためである。    

輸入チップの針葉樹は、平成711年頃までは300BDTを超えていたが、その後は年々減少し、18年には250BDT台を割り、そしてこの数年は245BDT前後になっている。この減少は、海外、特に北米の製材業が日本と同様に長期的な業況不振が大きく起因し、脊板チップの供給減に繋がっている。また広葉樹の輸入チップは、平成10年に1,000BDT台㎥に達し、その後は1,100BDT前後で推移し、20年には1,200BDTを僅かに超えている。

このように輸入チップは、傾向的には針葉樹の減少に対して広葉樹が比較的安定して供給されている。しかし、それはあくまでも需要に見合った範囲でのチップ輸入の結果であるといえよう。

輸入チップは、針葉樹では10ヵ国から輸入しているが、この5年間、輸入国別にみると最も多いのがオ−ストラリアからで40数%を占め、続いてアメリカ約30%、そしてこの間、NZ8%台から10数%へとシェアを上昇させている。また広葉樹では14ヵ国から輸入しているが、20年の上位5ヵ国にはオ−ストラリアが

 

1.1.3  海外チップの主要国からの輸入量(通関ベ−ス)

(単位:千BDT、括弧%)

年次(平成)

16

17

18

19

20

針葉樹チップ

オ−ストラリア

1,215

(43.6)

1,083

(41.3)

1,028

(42.1)

1,053

(42.2)

1,087

(44.4)

アメリカ

789

(28.3)

799

(30.4)

760

(31.1)

690

(27.6)

684

(27.9)

ニュ−ジランド

228

(8.2)

232

(8.8)

192

(7.8)

274

(11.0)

310

(12.7)

カナダ

118

(4.2)

148

(5.6)

272

(11.1)

242

(9.7)

194

(7.9)

フィジ−

148

(5.3)

111

(4.2)

111

(4.5)

114

(4.6)

116

(4.7)

その他

286

 (10.2)

252

 (9.6)

81

 (3.3)

122

 (4.9)

58

 (2.4)

小 計

2,784

(100.0)

2,625

(100.0)

2,444

(100.0)

2,495

(100.0)

2,449

(100.0)

広葉樹チップ

オ−ストラリア

3,701

(33.1)

3,703

(32.2)

3,876

(34.2)

4,462

(37.7)

4,464

(36.4)

チリ

1,481

(13.2)

1,628

(14.2)

1,774

(15.7)

2,011

(17.0)

2,350

(19.1)

南アフリカ

3,208 (28.7)

3,187

(27.7)

2,757

 (24.3)

2,458

 (20.8)

2,161

 (17.6)

ベトナム

606

(5.4)

644

(5.6)

720

(6.4

903

(7.6)

1,071

(8.7)

ブラジル

553

 (4.9)

613

 (5.3)

536

 (4.7)

735

 (6.2)

690

 (5.6)

その他

1,641

(14.7)

1,711

(14.9)

1,667

(14.7)

1,271

(10.7)

1,536

 (12.5)

小 計

11,190

(100.0)

11,486

(100.0)

11,330

(100.0)

11,840

(100.0)

12,272

(100.0)

合  計

13,974

14,111

13,774

14,335

14,721

 資料:財務省「日本貿易統計」

 

36%で首位、続いてチリ19%、南アフリカ18%、ベトナム9%、ブラジル6%が挙げられ、この5年間、これら5ヵ国のすべてが数%ずつシェアを伸ばしてきている。

 海外チップは、現状では世界的な景気後退により供給過剰の状況と見られているが、中長期的には中国、インド、ロシア、ブラジル、中近東諸国などのほか、新興国の紙需要の高まりにより、チップ自体の需給がタイト化するといわれている。また為替レ−トや価格上昇への不安、一方では環境保全等の問題も介在している。このため国内の紙パ産業等、需要業界ではチップの安定確保策として国内外で種々の取組を行っているが、この中で、輸入チップから可能な限り国産チップの利用率を高めていことする動きが高まっている。したがって国内では関係行政・業界あげて国産チップの安定供給に向けた中長期的な体制づくりが検討されてきている。

 

1.2 国産チップの生産構造

 

1.2.1 国内のチップ工場概要

上記したように、国内の年間チップ総需給量約2,000BDT(容積換算:約3,700万㎥)に占める国産チップは約30%である。また国産チップの生産は、概ね原木利用のもの50%、工場残廃材利用のもの30%、解体材等廃木材利用のもの20%である。ここでは最近の国産チップの生産状況について公表統計値と実態調査を基にして述べることにする。

国産チップは、専門工場と兼営工場で生産されている。

専門工場の多くはパルプ原木を原料とし、また兼営工場の多くは製材脊板や端材等を原料としている。したがって一般には、専門工場のものを原木チップ、兼営工場のものを脊板チップと称することが多い。国内のチップ工場は、平成20年で専門工場269、兼営工場1,744(うち製材工場が1,37577%)と示され、工場数としては圧倒的に兼営タイプが多い。

1.2.1から工場数の推移をみると、昭和45年にピ−ク(7,790工場)になった後、平成15(2,201工場)まで急速に減少し続けたが、この5年間は減少のスピ−ドがやや治まってきている。このような工場数の減少は、専門工場よりも兼営タイプの工場に顕著に表れてきたが、上記したがそれは製材業の不振による廃業、生産部門の撤退などに起因している。

現状の工場規模については、専門といえども従業員20人以上の工場数は3%弱に過ぎず、10人以下が87%を占め、兼営では99%までが4人以下の工場である。また全国平均で見た場合の1工場当たり年間生産量(絶乾重量)では、専門工場が約10.7千トン、兼営工場が1.6千トン(平成18年木材需給報告書)であり、総じて小

   

    

 

 

 

 

 

 

 

                                              

                                              

                                       

 

 

 

 

 

 

 表1.2.1   調査対象工場の概況

区 分

専門工場

(全チ連会員)

兼営工場

(国製協会員)

調査票

発送件数

85

26

回答件数

46

25

回収率(%)

50.1

96.2

1工場当り

平均従業員

専任()

6.4

1.6

兼任()

2.7

2.1

チッパ−

保有台数

原 木 用

83(2.1)

3(1.0)

廃 材 用

26(2.6)

64(2.6)

チッパ−

動力数(kW)

原 木 用

7,699(220.0)

336(122.0)

廃 材 用

2,833(354.1)

3,150(47.2)

木材チップ

20年生産量

(BDT)

原木チップ

670,499(17,645)

16,565(8,283)

廃材チップ

29,801(2,483)

147,156(5,886)

700,300

163,721

注 チッパ−保有台数、チッパ−動力数、チップ生産量の括弧は1工場当たりの値。

  但し1工場当たり動力数と生産量は、専門工場の原木用は38件分、廃材用は12

分、また兼営工場はそれぞれ3件分、25件分である。

規模である。

ともあれ、今回の実態調査では、専門工場(原木チップ)として全国木材チップ工業連合会と(全チ連)と兼営工場(脊板チップ)として国産材製材協会(国製協)の会員を対象にしてアンケ−トを行い、前者で46件(調査票発送85件、回収率50.1%)、後者で25件(同26件、96.2%)について工場概況を把握した。これらを整序したのが、1.2.1である。

 調査対象は、専門工場の場合、1工場当たりの専任従業員6.4人、保有チッパ−原木用2.1台(平均220kW)、廃材用2.6台(同354kW)、20年の生産量は原木チップ17,645BDT、廃材チップ2,483kWと示され、兼営工場ではそれぞれ1.6人、脊板処理用チッパ−2.6(47.2kW)20年の脊板チップ生産量5,886BDTとなっている。

なおまた今回調査の生産量は、専門工場700.3BDT、兼営工場163.7万トンで全国のそれぞれ20%(工場数では12%)、6%(同2%)に過ぎない。以下で述べる内容は、今回調査の結果を基にすることが多くなるが、このように全国的な位置づけが低いため、必ずしも実態を反映していないことを予め断っておく。      

 

1.2.2 チップ工場の原料調達

1)原料調達の実態

専門工場の主体的な原料は原木丸太であり、その手当は立木購入と素材購入の場合がある。今回調査の対象46工場うち原料入手区分で回答を得られたのは、1.2.2のように針葉樹36工場、広葉樹40工場である。

 

1.2.2 チップ原木の入手区分別数量と原木の購入平均単価

立木・素材別

針広別

購入量

購入単価(/)

 

回答数

材積(㎥)

(%)

上期

下期

立木買い

針葉樹

99,667

5.8

2,749

2,466

14

広葉樹

168,461

9.8

4.849

4,959

17

小計

268,128

15.6

 

 

 

素材買い

針葉樹

976,305

56.9

5,036

5,190

22

広葉樹

471,329

27.5

8,153

8,278

23

小計

1,447,634

84.4

 

 

 

    

1,715,762

100.0

 

 

 

 注.購入単価は平成20年上期(16月)、下期(712)の平均である

 

 

 

表示のように、購入量の針、広葉樹別割合は63%対37%であり、入手区分別では針葉樹では立木購入が9%、素材購入が91%、広葉樹ではそれぞれ26%、74%であり、全体では立木買いが16%、素材買いが84%となり、素材での購入が圧倒的に多い。つまりチップ原木は針葉樹を中心に素材買いしているのが実態である。

また立木と素材の購入先については、1.2.3に示すように、立木購入の場合、林家からの46%と会社有林等25%を含めた民間の森林所有者からが約70%、国有林から20%、森林組合及び市町村から10%ほどを手当している。一方、素材購入の場合は、素材生産業者から65%、森林組合や素材森林組合から20%、原木市場から7%、その他3%となっている。以上から専門工場における原木調達は、立木では民有林、素材では民間の素材生産業者からの手当が中心になっていることが知られる。

 

1.2.3  立木及び素材の購入先別数量割合

立木購入先別数量割合(%)<有効回答数20件>

営林局署

県市町村

森林組合

林家

社有林等

20.6

3.1

6.2

45.7

24.5

100.0

素材購入先別数量割合()<有効回答数37件>

営林局署

県市町村

森林組合

林家

原木市場

素材業者

素生協

2.7

0.6

14.2

6.2

7.1

65.2

4.0

100.0

 注.素材購入先の素生協とは、素材生産協同組合の略称である

 

2)チップ原木の受入と原木代の決裁

チップ工場に入荷した原木(素材)は、一般には「生重量(トン)」で検量し、実際の取引ではこの検量値に一定係数を乗じて「容積(㎥)」に換算し、これに原木単価を乗じて代金決裁しているのが実態である。

この換算係数は、樹種、地域により若干異なるが、多くの場合、スギ、ヒノキ等の針葉樹では0.7(最大はマツ類0.8)、広葉樹では樹種込み0.65(最大はナラ類0.75)を採用している。なおチップ工場における実際の検量には、原木を積載したトラックをトラックスケ−ルで計測し、その値から空荷トラックの重量を差し引いて原木の生重量としている。なお恒常的な取引先で用いるトラックには、車両毎に予め重量計測を行い、供給側と受入側でデ−タを持ち合わせている場合が多い。

チップ工場の原木購入では、上記したように一般的には生材重量を容積に換算して取引の単位とし、容積当たりの原木単価を乗じて決裁している。この場合の原木単価は、木材全般の市況動向やチップ需給関係、さらには地域によっても異なるが、平成20年度の平均単価(円/㎥)を前掲表1.2.2に示している。表示のように、立木では針葉樹が2,4702,750円、広葉樹が4,8504,900円、また素材では針葉樹が約5,000円、広葉樹が約8.200円と表される。立木買いでは、これに素材生産費が加算されるが、調査結果の素材価格との関係からいえば、針葉樹で2千数百円、広葉樹で3千数百円ほどが素材生産費にかかっていることが知られる。なお立木買いのある工場は、素材生産は直営で行うものもあるが、多くは当該地区の業者に作業請け負いさせているようである。

なおまた、今回調査のもう一方は製材工場を対象としており、当然、チップ原材料は自工場で排出する製材背板や端材であり、これらは使用原木に対する材積割合はおおよそ1215%に相当し、製材ラインに附帯するチッパ−で処理している。

 

3)原木検量上の諸問題

 チップ工場における立木及び素材の受入に係わり、特に検量方法に対する意向調べでは、回答数は少ないが以下のような問題点が指摘されている。ここではチップ工場側の意見としてこれらを列挙しておこう。

ア 重量検収を行いたいが、トラックスケ−ルの設備投資で資金的な余裕がないために、現状では層積で検量している(1社)。

イ 国有林材のチップ原木は容積で購入しているが、重量換算すると過大な値になるため、重量単位での売却を望む(2社)。

ウ チップ原木は生重量で受入し、代金決済は一定係数を乗じて容積に換算して行っているが、原料が一定でないために正確な数量にはならない。換算係数の決定に難しさがある(6社).

 

1.2.3 チップ生産状況

今回調査で対象としたチップ工場の平成20年度における生産量は、1.2.4のように全チ連会員の専門工場では原木チップ67BDT38工場)、廃材チップ約3BDT12工場)、国製協会員では原木チップ1.7BDT(2工場)、脊板チップが約15BDT(25工場)となっている。なお対象工場の全国生産量に占めるシェアは原木チップで20%、廃材チップで6%である。

調査対象工場の樹種別チップ生産量は、1.2.5のように、専門工場の場合、針葉樹30数%、広葉樹70%で、上記した全国平均40%対60%に比べると、今回調査分は広葉樹チップの生産割合がやや高くなっている。また針葉樹ではスギが半数以上を占めて53%と最も多く、続いてアカマツ23%、ヒノキ12%、カラマツ8%、エゾ・トドマツ4%の割合で生産されている。一方、製材工場の脊板チップ生産では、スギ58%、ヒノキ15%、スギ・ヒノキ込み18%、カラマツとエゾ・トドマツがそれぞれ5%と示される。このように針葉樹チップの生産では、全国的にスギが最も多く使用さていることが知られる。                

1.2.4   調査対象工場のチップ生産量

区 分

専門工場

(全チ連会員)

兼営工場

(国製協会員)

調査対象

工 場 数

原木チップ

38

2

廃材チップ

12

25

チップ

生産量

(BDT)

原木チップ

670,499(17,645)

16,565(8,283)

廃材チップ

29,801(2,483)

147,156(5,886)

700,300

163,721

   注.有効回答のみの工場数・生産量を計上、括弧は1工場当たり生産量。

 

               

1.2.5  国産チップの樹種別生産量

(単位:絶乾重量トン)

専門工場(全チ連会員対象:38件)

針 葉 樹

広葉樹

合計

スギ

ヒノキ

アカマツ

カラマツ

エゾ・トド

小計

119,949

(17.1)

27,438

(3.9)

52,701

(7.5)

19,155

(2.7)

6,691

(9.6)

226,811

(32.4)

473,489

(67.6)

700,300

(100.0)

兼営工場(国製協会員:25件社)

針 葉 樹

合計

スギ

ヒノキ

スギ・ヒノキ

カラマツ

エゾ・トド

94,077

(57.5)

24,755

(15.1)

28,666

(17.5)

7,787

(4.8)

8,436

(5.2)

163,721

(100.0)

 

 

1.3  チップの販売と取引状況

 

1.3.1 チップの販売方法と取引条件

チップ工場では、需要先である紙パ工場やボ−ド工場等へ直接販売する場合と集荷業者へ販売する場合がある。後者は需要工場との取引契約により、複数の工場から集荷しており、業態としては需要工場と同系の会社や集荷・配送を専業とする会社が多い。

1.3.1は今回調査の結果から、チップ工場のチップ販売方法と取引における単価の仕切場所並びに取引先からの品質基準等のについて示したものである。

表示のように専門工場では需要工場へ直接販売するものが40%ではあるが、専門工場、兼営工場を問わず、集荷業者へ販売するものが半数を超えている。また兼営工場では集荷業者への販売が56%、これに両者へ販売する場合を加えると72%の工場は集荷業者に依存していることが知られる。このことは、専門工場と兼営工場での生産規模の違いが物語っているようである。とはいえ、国産チップの流通では、全体として集荷業者が大きな役割を果たしているのが実態である。 

このような販売方法の下でのチップ単価の仕切場所を見ると、専門工場の場合は納入工場渡しが94%強であるのに対して、兼営工場では86%が自社のサイロ下渡して単価契約が行われている。なお納入工場渡しでは運賃込みの価格契約になるが、サイロ下渡では運賃は生産工場が負担することになり、実態としてはいかに輸送コストを引き下げるかはチップ工場の自助努力によることになる。

チップ販売においては、一般には取引先から品質基準が提示され場合が多い。納入先ではこの品質基準でチップ検収を行っている。品質基準にはサイズの許容範囲、白チップでは樹皮の混入率(白チップとは剥皮したもの、これに対して樹皮付は黒

チップという)、スリ−バ−(箸状の細棒など、主に刃物の調整不備が要因)、節付きや腐れチップの混入率、ダストの混入率、異物混入(金属片やプラスチック、ビニ−ル、砂礫、陶器片、油脂や塗料・接着剤の付着など)等があり、それぞれに制

限値が設定されている。

この品質基準の制限値の許容範囲について専門工場からの回答結果を各項目別に基に示したのが1.3.2(チップサイズ)、1.3.3(樹皮・スリ−バ・ダストの混入率)、1.3.4(節・腐れなど欠点を含むチップ)である。

@チップサイズでは、繊維方向で長いものは1850mm、短いものは3.03.0mmまで許容されるが、平均的なものは1640mmの範囲になっており、幅は広いものは20.080.0mm、狭いものは3.020.0mmまで許容されるが、平均的なものは3.025.0mmの範囲になっているし、厚さは厚いものは3.010.0mm、薄いものは2.05.0mmまで許容されるが、平均的なものは3.022.0mmの範囲になっている。つまりチップは長さ1640mm(平均20.8mm)、幅3.025.0mm(同19.4mm)、厚さ3.022.0mm(同4.7mm)が平均的なサイズとして納入先から指示されていると云えよう。

A樹皮及びスリ−バ−並びにダストの混入具合は、検収時で採集するサンプルの重量比で制限されるが、樹皮の混入率では0%とされている工場数が全工場数の34%を占め、混入率1〜3%以下とされているものが45%になっている。またスリ−バーの混入率では01%以下とされている工場数が36%を占めているが、混入率15%まで許容されているものが70%ほどになっている。そしてダストの混入率は1%以内とされているものは50%を超え、かなり厳しい指示があることが知られる。

B欠点付チップは、節、腐れ等が重視され、混入不可とされている工場が圧倒的に多いし、異物混入にあっては、100%の工場が不可とされている。

 

 

1.3.1 チップの販売方法・取引条件等

    

専門工場(46社)

兼営工場(25社)

販売方法

需要工場へ直接販売

18(40.0%)

7(28.0%)

集荷業者へ販売

24   (53.3)

14  (56.0)

両者へ販売

3   ( 0.7)

4  (16.0)

販売単価

仕切場所

需要工場

直接販売

自社サイロ下

1  ( 5.3%)

6  (85.7%)

需要先工場

18   (94.7)

1  (14.3)

回答数(重複)

19  (100.0)

7 (100.0)

集荷業者

販  売

自社サイロ下

6  (22.2%)

9  (60.0%)

その他

21  (77.8)

6  (40.0)

回答数(重複)

27 (100.0)

15 (100.0)

取引先から

の品質基準

の制限項目

チップサイズの範囲

46 (100.0%)

25 (100.0%)

樹皮混入率

41  (89.1)

23  (91.0)

スリ−バ−混入率

43  (93.5)

19  (76.0)

節・腐れ等の制限

39  (84.8)

14  (56.0)

ダスト混入率

41  (89.1)

19  (76.0)

異物混入

41  (89.1)

25 (100.0)

 

 

 

1.3.2 サイズの許容範囲

    区    分

最長

平均

最短

長さ(mm)

範 囲

18.050.0

16.040.0

3.030.0

平 均

33.3

20.8

16.0

(mm)

範 囲

20.080.0

3.025.0

3.020.0

平 均

37.6

19.4

8.9

厚さ(mm)

範 囲

3.010.0

3.022.0

2.05.0

平 均

6.3

4.7

2.9

 

 

 

 

1.3.3 樹皮混入率、スリ−バ混入率、ダスト混入率の許容範囲

混入率の

許容範囲

樹 皮

スリ−バ−

ダスト

件数

件数

件数

13

34

3

8

2

6

1%以内

2

5

11

28

16

48

12

3

8

5

13

3

9

23

12

32

9

23

6

18

35

7

18

2

5

1

3

5%以上

1

3

9

24

5

15

回答件数

38

100

39

100

33

100

 注.件数は許容範囲に該当する工場数を表す。

 

 

 

1.3.4 節、腐れ等の欠点付チップ及び異物混入の制限値

制限値

欠点項目

異物混入

節付き

腐れ付き

その他欠点

不可とする

2784%)

2184%)

360%)

45100%)

5%以下

516%)

416%)

240%)

 

回答件数

32(100)

25(100)

5100%)

45100%)

  注.制限値の%はサンプル重量に対する欠点付チップの重量、表中の括弧は回答

    工場数比。

 

チップ取引ではこの制限値を超えると、取引先から納入重量や単価で調整されるが、その実態は1.3.5のように示される。表示のように、オ−バサイズのチップでは約60%、それ以外の制限項目は約70%の工場は制限値を超えた重量比で納入重量から差引され(歩引きと称する)、また約30%の工場では単価の引き下げがあると回答している。このことから、供給側の思惑と実際上の取引価格にしばしば差が生じ、チップ工場側の不満に繋がっている。その意味では、チップの取引価格上、チップ工場側の生産・品質管理が、如何に重要な与件になるかを自ら自覚していく必要もあろう。

 

 

1.3.5  許容範囲を超えた場合に取引先から取られる措置

制限項目

納入重量から

 差引(歩引き)

単価引

き下げ

不明

回答数

チップサイズ

2557

1534

2

44100%

白チップでの樹皮混入

2966

1432

1

44100%

スリ−バ−混入

3067

1533

0

45100%

節、腐れチップの混入

3169

1124

1

45100%

ダスト混入

3067

1431

1

45100%

 

 

1.3.2 チップ取引先と納入量

チップ工場は紙パ工場等との取引で納入数量を契約する場合が多い。これに関して先ず、1.3.6から取引先との契約で納入数量の規定を交わしているか否かをみることにする。

1.3.6 取引先との納入数量規定の有無

区 分

規定あり

規定無し

不明

調査工場数

全チ連会員工場

3985

49

36

46100

国製協会員工場

624

1872

14

25100

 

表示するように、専門工場では殆どが納入数量の規定を交わしているが、兼営工場では規定無しとするものが多い。なお実態としては生産・納入規模が大きい工場で規定を交わしているようで、規模が小さい背板チップを供給する製材工場等の兼営工場では特に規定を定めていないものが多くなることを反映している。

次ぎに契約数量に対する納入実績の関係から、取引先が講じている措置について1.3.7からみることにする。

 

1.3.7 契約数量と納入実績による取引側の措置

納入実績の事項

取引側の措置

回答数

契約量に満たない場合

後で納入制限

特に問題なし

不明

396

90

226

80

契約量を達成した場合

奨励金有り

特段措置無し

不明

396

00

326

70

契約量を超えた場合

奨励金上積み

特段措置無し

不明

396

0(1)

29(5)

10(0)

表示するように、今回調査ではチップ工場が取引側と納入数量を契約するものは専門工場39、兼営工場6存在しているが、納入実績が契約量に満たない場合、契約量を達成した場合、契約量を超えた場合のいずれにおいても、取引側からは特段の措置がない。つまり契約量で規定しても実際の取引は、通常の商行為で対処しているのが実態のようである。

 

1.4 取引先とのチップ検量方法・納入単価決め

 

1.4.1 検量方法について

 今回は原木チップを主体とする専門工場と脊板チップの製材工場を対象にした調査から取引先のチップ受入の際の検量方法について、1.4.1に示す結果を得た。

 

1.4.1 取引先のチップ検量方法について

検量方法について

全チ連会員

(原木チップ)

国製協会員

(脊板チップ)

両者間の協議で決定しおり、内容も熟知している

2554.3

520.0

取引先の方法に従っており、内容は熟知していない

2043.5

2080.0

どのように決定しているのか分からない

12.2

0

回答工場数

46100.0

25100.0

  注.表中の括弧は回答工場数割合(%)

 

 アンケ−ト調査によれば、取引側でのチップ検量は両者間でその方法を協議しており内容も熟知しているので問題がないとするものは専門工場で54%と半数を超えているが、脊板チップの製材工場では20%である。また取引先の方法に従っており、内容は熟知していないとするものは専門工場で44%、兼営工場では実に80%にもなっている。つまり規模が大きな専門工場は、検量方法を相手と協議し、内容も知っているのが半数強であるが、約4割強は相手の方法に従っているし、脊板チップの製材工場では比較的規模が大きなところ以外は検量方法の内容が余り分からずに取引しているのが実態のようである。チップ検量の方法については、供給側からしばしは正量取引ではないという声を聞くが、この調査結果から云えばそれ以前に自ら相手の検量方法の内容を十分理解していく必要があるとのではないかと思われる。

 次ぎに、アンケ−ト調査の結果から取引先の検量方法に関するチップ工場側の疑問点や要望事項を以下に示す。

(専門工場側の意見)

ア 当社のチップ納入先は1社であるため、他社との検量方法の違いが分からないため何処に問題があるのか比較できない(1社)。

イ 納入先では受入の都度、検量・検収用機器で行っているようだが、受け入れ伝票の含水率は何時も同じ値であることに疑問をもっている(1社)

ウ 自社には検量技術がないため、取引先の方法に従わざるを得ない(1社)

エ 自社での検量値、含水率デ−タを提示しても相手側はデ−タとして採用してくれないことに不満がある(2社)。

オ 納入先における検量のためのサンプル採集の箇所数や数量が少ない。正量取引のためにはサンプル採集の密度を濃くされたい(1社)。

カ 納入先の検量担当者によって計測結果が異なることに疑問がある(1社)。

キ 絶乾重量の算定基準を明らかにして欲しい(1社)。

ク チップ価格がやや高くなると、絶乾率で操作して検量されているような気がしている(1社)

ケ 検量方法が納入先で異なっているため、公平性を期待したい(1社)。

(兼営工場側の意見)

ア 納入の都度異なる含水率が伝票の数値が何時も同じであるため、絶乾率の測定に疑問あり(1社)

イ 含水率、絶乾重量の算定が不明である(4社)。

 

1.4.2   納入単価決めについて

チップの取引単価は、その時々の需給関係や市況によって決まるが、これに需要先と供給側であるチップ工場の生産・納入規模や取引関係で、個別工場毎に若干の差異がある。ではチップ工場の納入単価は取引先とどのように決めているのであろうか。この関係を調査結果から示したのが、1.4.2である。

 

1.4.2 取引先とのチップ納入単価の決め方について

納入単価決めについて

全チ連会員

(原木チップ)

国製協会員

(脊板チップ)

両者間の協議で決定しおり、内容も熟知している

2350.0

1352.0

取引先の方法に従っており、内容は熟知していない

2247.8

1248.0

どのように決定しているのか分からない

1 1.2

0

回答工場数

46100.0

25100.0

注.表中の括弧は回答工場数割合(%)

 

 

この実態は表示するように、専門工場、兼営工場とも取引先との協議で決めているのと取引先の提示に従っているものがほぼ半々になっている。今回調査では両者の違いが規模の差よりも、傾向的にはどこに納入・販売しているか、つまり取引先によって差があるようである。いずれにしても、今回調査の対象とした71チップ工場はその約半数までが、どのように納入単価が決められているか知らないまま取引先の提示に従っているという実態は問題視されてよいと思われる。

 以上のような単価決めの実態の中で、実際の取引単価の契約はどのように行われ

ているのであろうか。この実状を示したのが、1.4.3である。

 

1.4.3  納入単価の契約について(重複回答)

     区   分

随時

月毎

四半期

半年

年間

需要工場

直接販売

全チ連会員

11(32.4)

5(14.7)

8(23.5)

4(11.8)

6(17.6)

34

国製協会員

 7(50.0)

1(7.1)

0

4(28.6)

2(14.2)

14

集荷業者

への販売

全チ連会員

1(3.1)

9(28.1)

8(25.0)

8(25.0)

6((18.8)

32

国製協会員

13(39.4)

9(27.3)

2(6.1)

1(3.0)

8(24.2)

33

注.表中の括弧は回答工場数割合(%)

 

 チップ工場の販売先への納入単価は、直接販売する場合は随時契約とするものが

比較的多いが、これに次いで専門工場の中には四半期毎、兼営工場の中には半年毎

の契約が多くなっている。また集荷業者に販売する場合、専門工場では月毎、四半

期毎、半年毎で契約しおり、兼営工場では随時、月毎、年間の契約で納入している。

このようにチップ工場の販売方法やそのタイプで、様々な契約方法がとられており

、供給側と取引先では個別的な契約方法がとられているのが実態のようである。

次ぎに、アンケ−ト調査の結果から納入単価の決め方に関するチップ工場側の疑問点や要望事項を以下に示す。

(専門工場側の意見)

 ア 納入単価は一応両者で協議はするが、決定権は先方にあり、それに従うしかない(1社)。

 イ 納入先では内外チップ等、原料全体で受入価格を調整しているようで、その中で専門工場からの国産原木チップの価格は地域や生産・供給規模、配送距離などで決定していると思われるが、その場合の価格決定に関する情報を提示してもらいたい(1社)。

 ウ 取引先の一方的な価格決定であり、もう少しチップ工場の意見を聞き入れて決定してもらいたい(2社)。

 エ 先方の価格決定に不満はあるが、それに従わざるを得ないのが実状(3社)。

(兼営工場側の意見)

 ア 取引先とは月毎に納入価格を協議しているが、当社の言い分が反映されないのが実状である(1社)。

イ 価格の決めが一方的で不明瞭である(2社)

 

1.4.3  チップの取引価格

チップ取引価格では、輸入チップに比べて国産チップの相対的な低さが問題視されるが、そこには供給規模とその体制、国際価格や為替レ−トの関係、国内外での調達基盤への投資など、複雑な問題も介在している。ここではこれらについての言及を省き、今回のアンケ−ト調査結果の範囲から実勢価格のみについてふれる。

1.4.4は、今回のチップ工場調査から収集した樹種別の脊板チップと原木チップの販売単価(円/絶乾重量kg)を掲げたものである。

この単価は、脊板チップと原木チップ、また両者の樹種別の傾向を把握する意味で、実勢の販売単価をチップ工場のサイロ下渡で調整しており、需要工場への納入単価ではないことを断っておく。したがって実際の取引単価はこの単価にチップ工場から納入工場までの配送費が加算されることになり、この場合の配送費は、配送システムや輸送距離などによって、当然だが工場毎に異なってくるのが実態である。

ともあれ単価仕切場所をサイロ下として、同じレベルで単価表示してみると、脊板チップの平均単価はスギ9.25円、ヒノキ9.40円、カラマツ9.45円、エゾ・トドマツ12.75円であるが、原木チップは同一樹種でも、それぞれ13.47円、14.43円、15.75円、16.05円と表され、脊板チップよりも原木チップの単価水準が高くなっている。

この理由には、一つに原木チップには原材料費分が勘案さているようだが、脊板チップにはそれが満度にオンされていないためと考えられる。つまり脊板チップは製材の副産物であり、原材料費は既に製材生産の段階で計上されているということかも知れない。二つ目には脊板チップの供給量は原木チップよりはるかに少なく、需要側では原料量の調整弁として扱われる意味合いから、価格評価が相対的に低水準になっているためとも考えることができる。三つ目には、原木チップは景況によってしばしは取引先の受入数量が調整されるが、脊板チップでは景況に拘わらず満度に受入されるとう実態から、価格的に低位に位置づけさるのではないかとも思われる。いずれにしても国内チップ価格の問題提起には、原木チップ、脊板チップを問わず、その根拠となるコスト分析のデ−タ集積が必要になり、チップ工場側での今後の取組を期待したい。  

なお、チップ工場から取引先までのチップ輸送距離と運賃等については、これに関しては回答数が少ないが、判明分を掲げると1.4.5のように示される。

 表示のようにチップ輸送距離と配送費の関係では、100Kmまでは23/kg100Km以上150Km未満で5/kg以下、150Km以上200Km未満で56円以下、200Km以上は約7/kgと表される。

 

1.4.4  自社サイロ下渡しの販売価格(平成20年度)

(単位:円/kg絶乾)

チップ種 

樹種

回答数

平均

高値

安値

四半期平均価格

46

79

1012

13

脊板チップ

スギ

12

9.25

10.5

8.0

9.2

9.2

9.4

9.2

ヒノキ

5

9.40

11.0

8.0

9.2

9.5

9.6

9.3

スギ・ヒノキ込

3

9.43

11.0

8.0

9.2

9.5

10.0

9.0

カラマツ

1

9.45

9.7

9.2

9.2

9.2

9.7

9.7

エゾ・トドマツ

1

12.75

13.0

12.5

12.5

12.5

13.0

13.0

(調査対象:国産材製材協会会員工場のうち、判明分22件の平均)

原木チップ

スギ

6

13.47

15.5

12.8

13.8

13.7

13.3

13.1

ヒノキ

4

14.43

15.8

15.2

15.4

15.4

15.5

15.4

アカマツ

5

15.73

16.6

15.7

15.7

15.7

15.8

15.7

カラマツ

3

15.75

15.9

15.7

15.9

15.7

15.7

15.7

エゾ・トドマツ

1

16.05

16.3

15.8

15.8

15.9

16.3

16.2

広葉樹

9

19.93

23.0

19.0

19.2

20.0

20.3

20.2

(調査対象:全国木材チップ工業連合会会員工場のうち、判明分28件の平均)

 

 

1.4.5 チップ輸送距離と運賃

輸送距離(Km

50Km未満

5099

100149

150199

200km以上

調査工場数

2

2

4

6

2

平均輸送距離(Km)

32

78

117

178

267

輸送費(/kg)

23

23

3.14.7

5.15.6

6.77.2

配送会社

系列社

契約社

契約社

契約社

契約社

配送回数

1/

1/

2/

2/

2/

チップ積載車両

12t

22t

12t,22t

20t,22t

22t2

おわりに

 

木材チップを巡る諸問題には、輸入チップと国産チップの需給・価格関係や原料調達、輸送方式、取引上での検量・検収方法など、多くの課題がある。特に需給シェア30%ほどの国産チップには、その原料資源の確保とともに市場性を高めていくための安定供給体制づくりが重要な課題になっている。国内資源では、未利用間伐材の利用が環境面や森林整備上にとっても大きな効果が期待されることから、近年、業関係行政機関・業界あげてその取組を展開してきている。今回の調査事業ではこのような背景を踏まえ、チップ原木としての国産材の利用実態及び国産チップの生産・流通・取引・利用の実態を解明することにし、とりわけ需給関係者に信頼される検量方法の確立を目的にした基礎デ−タの収集を行ってきた。上述してきた報告1の内容は、国産チップの生産と取引の構造をアンケ−ト調査を基にして分析し、そこでの特質と問題点の摘出を行い、報告2以降への導入部分に位置づけしている。

これらの内容が関係各位の大方の参考になれば幸いである。なお今回のアンケ−ト調査では全国木材チップ工業連合会及び国産材製材協会の会員に多大なご協力を頂いた。ここに深謝申し上げる。