2. 間伐材チップの生産と取引実態 〜チップ工場の事例調査から〜

2.1 丹治林業(株)〈北海道〉

 丹治林業(株)は、北海道苫小牧市に所在し、木材チップ製造・販売を行っている。丹治林業(株)の木材チップ工場では、チッパー(定格出力175kW1台、バーカー1台を使用して、製紙用の木材チップを生産している。従業員数は2名(専任)である。木材チップの生産能力は年間17,000絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績はカラマツ2,400絶乾重量トン、エゾ・トド1,260絶乾重量トン、広葉樹8,000絶乾重量トンの合計11,660絶乾重量トンである。したがって、生産能力に対する生産実績の割合は69%である。木材チップ用の原料は100%原木であり、廃材などを原料とする木材チップの生産は行っていない。

 表2.1.1は、平成20年度における丹治林業(株)木材チップ工場の原木購入量と購入単価を示している。丹治林業(株)木材チップ工場では、針葉樹、広葉樹とも素材買いにより木材チップ用原木を購入しており、原木取引の単位は材積(m3)で行っている。平成20年度における丹治林業(株)木材チップ工場の原木購入量は20,000m3で、針葉樹が素材買い7,000m3(全原木購入量の35%)であり、広葉樹が素材買い13,000m3(全原木購入量の65%)である。平成20年度における丹治林業(株)木材チップ工場の原木の購入平均単価は、49月期、103月期ともに素材買いの針葉樹が4000円/m3、広葉樹が8000円/m3であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丹治林業(株)木材チップ工場では、素材を素材業者および森林組合から購入しており、その数量割合は素材業者70%、森林組合30%である。森林管理局・森林管理暑等、県・市町村、素材生産者協同組合、原木市場、林家等からは購入していない。専属の素材生産業者が45件あり、材の出所は国有林が中心である。森林組合は民有林と国有林の請負・買取として素材生産を行っている。

 丹治林業(株)木材チップ工場の木材チップ原料の買い受け(検量)単位は、チップ団体等との取り決めによっている。すなわち、素材の場合は、検量を重量で行い、樹種ごとの換算係数をかけて材積に換算しているとのことである。換算係数は、広葉樹が0.7m3/トン、針葉樹が0.75 m3/トンである。
 丹治林業(株)木材チップ工場で生産された製紙用木材チップは、直接製紙工場へ販売されている。納入製紙工場は、広葉樹チップは日本製紙(株)白老工場、針葉樹チップは王子製紙(株)苫小牧工場である。単価の仕切り場所は日本製紙(株)白老工場は自社サイロ下渡し、王子製紙(株)苫小牧工場は納入先工場渡しである。

 

 

 

 

 

 

 丹治林業(株)木材チップ工場は、納入先である日本製紙(株)白老工場および王子製紙(株)苫小牧工場より製紙用木材チップの品質基準を提示されており、その品質基準を表2.1.2に示す。木材チップのサイズは、長さ645mm、厚さ36mmとなっている。樹皮の許容混入率は、0.3%以内、スリーバの許容混入率は、0.4%以内である。ダストの許容混入率は、0.8%以内である。

 丹治林業(株)木材チップ工場と納入先である日本製紙(株)および王子製紙(株)との間には、製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定があるが、契約量に満たない場合、全うした場合、契約量を超えた場合に、何らかの措置があるかどうかは実情不明とのことである。また、製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、両社が協議して決定しており、内容も熟知しているとのことである。

 表2.1.3は、丹治林業(株)木材チップ工場の製紙用木材チップの販売単価を示している。針葉樹チップの納入製紙工場は王子製紙(株)苫小牧工場であり、単価(納入工場渡し)は、平成20年度49月期ではカラマツが14.8円/絶乾kg、エゾ・トドが16.8円/絶乾kg、であり、103月期ではカラマツが15.5円/絶乾kg、エゾ・トドが17.5円/絶乾kgとのことである。広葉樹チップの納入製紙工場は日本製紙(株)白老工場であり、単価(自社サイロ下渡し)は、平成20年度49月期では19.3円/絶乾kg103月期では19.8円/絶乾kgとのことである。これらの販売単価は、すべて原木チップの白チップである。49月期と103月期を比較すると、僅かではあるが単価の上昇が見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

写真2.1.1 土場に保管された原木       写真2.1.2 広葉樹原木

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.1.3 カラマツ原木           写真2.1.4 カラマツ原木

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.1.5 原木                     写真2.1.6 原木


 

 

 

 

 

 

 

写真2.1.7 原木               写真2.1.8 チップヤード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.1.9 チップの出荷           写真2.1.10 チップの出荷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.2 (株)箱崎林業〈福島県〉

 (株)箱崎林業は、福島県南相馬市に所在し、木材チップ製造・販売、きのこ栽培用オガ粉製造・販売、粉砕バーク製造・販売、製材品の製造販売などの事業を行っている。(株)箱崎林業の木材チップ工場では、チッパー(太平製作所製、定格出力150kW1台、バーカー2台(ハマザキ製および中国機械製作所製)を使用して、製紙用、暗渠排水用、舗装用などの木材チップを生産している。従業員数は3名で、うち2名が専任、1名が鋸屑製造との兼任となっている。木材チップの生産能力は年間14,700絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績はスギ1,400絶乾重量トン、アカマツ3,050絶乾重量トン、広葉樹6,910絶乾重量トンの合計11,360絶乾重量トンである。したがって、生産能力に対する生産実績の割合は77%である。木材チップ用の原料は100%原木であり、廃材などを原料とする木材チップの生産は行っていない。

 表2.2.1は、平成20年度における(株)箱崎林業木材チップ工場の原木購入量と購入単価を示している。(株)箱崎林業木材チップ工場では、針葉樹、広葉樹とも立木買い、素材買いの両方で木材チップ用原木を購入しており、原木取引の単位は材積(m3)で行っている。平成20年度における(株)箱崎林業木材チップ工場の原木購入量は24,000m3で、針葉樹が立木買い6,000m3,素材買い5,000m3の計11,000m3(全原木購入量の46%)であり、広葉樹が立木買い4,000m3,素材買い9,000m3(全原木購入量の54%)の計13,000m3である。針葉樹では立木買いが多く、広葉樹では素材買いが多くなっている。また、全原木購入量における立木買いの割合は42%、素材買いの割合は58%である。平成20年度における(株)箱崎林業木材チップ工場の原木の購入平均単価は、49月期では立木買いの針葉樹が800円/m3、立木買いの広葉樹が1,200円/m3、素材買いの針葉樹が6,000円/m3、素材買いの広葉樹が7,500円/m3であり、103月期では立木買いの針葉樹が1,000円/m3、立木買いの広葉樹が1,500円/m3、素材買いの針葉樹が6,500円/m3、素材買いの広葉樹が8,000円/m3である。49月期と103月期を比較すると、立木買いの針葉樹が200円/m3、立木買いの広葉樹が300円/m3、素材買いの針葉樹が500円/m3、素材買いの広葉樹も500円/m3の購入単価の上昇が見られる。なお、システム販売のマツ間伐材の単価は4,500円/m3とのことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 (株)箱崎林業木材チップ工場では、立木を森林組合および林家から購入しており、その数量割合は森林組合が20%、林家が80%となっている。素材の直接の購入先は、素材業者(90%)、森林組合(5%)および林家等(5%)であり、森林管理局・森林管理暑等、県・市町村、素材生産者協同組合、原木市場からは購入していない。なお、木材チップ用原料の確保が困難な状況にあり、どこの森林を伐採するかという情報は足で稼ぐしかないとのことである。

 (株)箱崎林業木材チップ工場の木材チップ原料の買い受け(検量)単位は、立木の場合は森林所有者との協議で決めており、素材の場合は商慣行によっている。すなわち、素材の場合は、検量を重量で行い、樹種ごとの換算係数をかけて材積に換算しているとのことである。換算係数は、広葉樹が0.7m3/生重量トン、マツが0.8 m3/生重量トン、スギが0.85 m3/生重量トンであり、径級や伐採時期による補正は行わないとのことである。
 (株)箱崎林業木材チップ工場で生産された製紙用木材チップは、集荷業者へ100%販売されるが、直接製紙工場へ納入される。取引集荷業者は日本製紙木材(株)のみで、納入製紙工場は日本製紙(株)岩沼工場である。なお、GP用材は日本製紙(株)石巻工場へ納入しているとのことである。単価の仕切り場所は納入先工場渡しであり、単価契約方法は月毎となっている。

 

 

 (株)箱崎林業木材チップ工場は、取引集荷業者である日本製紙木材(株)より製紙用木材チップの品質基準を提示されており、その品質基準を表2.2.2に示す。木材チップのサイズ(長さ)は、540mmで平均22mmとなっている。樹皮の許容混入率は、試料2.5kg中の混入率3.0%以内で、2.0%までは許容され、2.1%以上の場合は有目引となる。スリーバの許容混入率は、試料2.5kg40mm網目オンのもの9.0%で、3.0%までは許容され、3.1%以上の場合は有目引となる。欠点としては腐れに基準があり、許容量は5%以内で、2.0%までは許容され、2.1%以上の場合は有目引となる。ダストの許容混入率は、試料2.5kg5mm網目パスのもの9.0%で、3.0%まで許容され、3.1%以上の場合は有目引となる。異物(金属、プラスチック、ビニール、砂礫、陶器類、油脂・塗料、接着剤付着など)の混入に関しては、すべて規格3を適用し、有目引となる。これらの許容範囲を超えた場合は、サイズ、樹皮、スリーバ、欠点、ダストについては納入重量からその分差し引かれ、異物については厳重注意・指導を受けることになっている。

 (株)箱崎林業木材チップ工場と取引集荷業者である日本製紙木材(株)との間には、製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定があるが、契約量に満たなくても特に問題はなく、契約量を全うしても、契約量を超えた場合も特段の措置はないとのことである。また、製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、両社が協議して決定しており、内容も熟知しているとのことである。

 表2.2.3は、(株)箱崎林業木材チップ工場の製紙用木材チップの販売単価を示している。納入製紙工場はいずれも日本製紙(株)岩沼工場であり、平成20年度49月期ではスギが17.8円/絶乾kg、アカマツが19.3円/絶乾kg、広葉樹が19.3円/絶乾kgであり、103月期ではスギが18.3円/絶乾kg、アカマツが19.8円/絶乾kg、広葉樹が19.8円/絶乾kgとのことである。これらの販売単価は、すべて原木チップの白チップである。49月期と103月期を比較すると、僅かではあるが単価の上昇が見られる。前述したように原木価格も上昇しているので、これが製紙用木材チップの単価にいくらか反映されたとも考えられる。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

写真2.2.1 土場に搬入された原木       写真2.2.2 広葉樹原木

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.2.3 アカマツ原木           写真2.2.4 スギ原木

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.2.5 スギ木材チップ用間伐材      写真2.2.6 工場への原木搬入


 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.2.7 バーカーへの原木投入       写真2.2.8 ドラムバーカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.2.9 チッパーへの原木投入       写真2.2.10 チップヤード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.3 株式会社 佐合木材〈岐阜県〉

 株式会社佐合木材は、岐阜県美濃加茂市に所在し、森林経営、林地開発、木材チップの製造・販売、造園土木・建築工事、木質系廃材のリサイクルを行う環境事業部、建築材料・住宅資材の販売、プレカット加工、ウッドデッキ等の木製品の製造販売を行う住設事業部、木造住宅の設計・施工を行う建設事業部の3事業部から成り、木材利用・木質リサイクルに関わる事業を行っている。環境事業部には本巣工場、各務原工場、美濃加茂工場、高山工場の4工場がある。

本巣工場では、チッパー1台(富士鋼業製、定格出力150kW)、バーカー(富士鋼業製)1台を使用して原木チップを、各務原工場ではチッパー1台(富士鋼業製、定格出力110kW)、バーカー1台(富士鋼業製)を使用して製材工場の背板やプレカット端材を原料とする廃材チップを生産している。また、移動式チッパーを所有しており、各工場の土場で根株や剪定枝等の破砕を行っている。チップ製造に関わる従業員数は専任5人、兼任4人の計9人である。木材チップの生産能力は、原木チップ年間15,000絶乾重量トン、廃材チップ年間5,500絶乾重量トンである。平成20年度の生産実績は、原木チップはスギ2,700絶乾重量トン、ヒノキ1,200絶乾重量トン、アカマツ100絶乾重量トン、広葉樹800絶乾重量トンの合計4,800絶乾重量トン、廃材チップはスギ1,300絶乾重量トン、ヒノキ200絶乾重量トンの合計1,500絶乾重量トンである。生産能力に対する生産実績の割合は、原木チップで32%、廃材チップで27%であり、素材生産量や製材工場の生産量が減少していることからチップ原料となる原木や背板の供給量も減少しており、生産量は以前より少なくなっているとのことである。また、以前は広葉樹チップの生産量が多かったが、現在は針葉樹チップが主体となっている。

 表2.3.1は、平成20年度における株式会社佐合木材木材チップ工場の原木購入量と購入単価を示している。株式会社佐合木材木材チップ工場では、針葉樹、広葉樹とも素材買いで木材チップ用原木を購入しており、原木取引の単位は材積(m3)で行っている。平成20年度における株式会社佐合木材木材チップ工場の原木購入量は5,500m3で、針葉樹が素材買い4,500m3(全原木購入量の82%)であり、広葉樹が素材買い1,000m3(全原木購入量の18%)である。平成20年度における株式会社佐合木材木材チップ工場の原木の購入平均単価は、49月期では素材買いの針葉樹が8,500円/m3、素材買いの広葉樹が7,800円/m3であり、103月期では素材買いの針葉樹が8,000円/m3、素材買いの広葉樹が7,500円/m3である。49月期と103月期を比較すると、素材買いの針葉樹で500円/m3、素材買いの広葉樹で300円/m3の購入単価の下降が見られる。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 株式会社佐合木材木材チップ工場では、チップ用原木を素材業者(50%)、原木市場(20%)森林組合(30%)から素材で直接購入しており、森林管理局・森林管理暑等、県・市町村、素材生産者協同組合、林家等からは購入していない。また、立木買いは行っていない。ほとんどは岐阜県内の材であり、取引のある素材業者は約20件、常時納入している業者は45件とのことである。揖斐郡森林組合から入る素材は典型的な間伐材であり、森林組合の小径木加工事業の原料として適さない材をチップ用原木として購入している。また、廃材の手当については、自社プレカット工場の端材(無償)や建築解体材(逆有償)の他、他社工場から製材背板や端材を購入している。廃材の取引単位は生重量トンであり、平成20年度の購入実績は1,800生重量トンである。購入平均単価は49月期、103月期ともに2,300円/生重量トンであった。木材チップ原料の買い受け(検量)単位は、素材の場合は商慣行によっている。すなわち、検量を重量で行い、樹種ごとの換算係数をかけて材積に換算しているとのことである。換算係数は、重量から材積への換算係数は、針葉樹・広葉樹ともに0.7 m3/トンを使用しているとのことである。

 株式会社佐合木材木材チップ工場で生産された製紙用木材チップおよび木質ボード用チップは、製紙工場およびボード工場へ直接販売される。納入製紙工場は王子製紙(株)春日井工場、大王製紙(株)可児工場、納入ボード工場はニチハマテックス(株)大江工場である。単価の仕切り場所は全て納入先工場渡しであり、単価契約方法は随時となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

株式会社佐合木材木材チップ工場は、取引製紙工場である王子製紙(株)より製紙用木材チップの品質基準を提示されており、その品質基準を表2.3.2に示す。木材チップのサイズ(長さ)は、1625mmで平均20mmとなっている。樹皮の許容混入率は、試料0.5kg中の混入率5.0%以内で、5.0%以上の場合は返品となる。スリーバの許容混入率は、試料1.0kg50mm網目オンのもの2.5%以内である。欠点としては腐れに基準があり、腐朽材の混入は認められない。ダストの許容混入率は、試料1.0kg5mm網目パスのもの1.0%以内である。許容範囲を超えた場合には、納入重量からその分差し引かれる。異物の混入は不可であり、混入があった場合は単価を値引きされる。株式会社佐合木材木材チップ工場と取引業者である王子製紙(株)との間には、製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定は特にない。製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、取引先の方法に従っており、内容も熟知していないとのことである。

 表2.3.3は、株式会社佐合木材木材チップ工場の製紙用および木質ボード用木材チップの販売単価を示している。製紙用チップの納入製紙工場は大王製紙(株)可児工場であり、平成20年度49月期ではスギが18.5円/絶乾kg、広葉樹が17.5円/絶乾kg1012月期ではスギが19.5円/絶乾kg、広葉樹が17.5円/絶乾kg13月期はスギが18.8円/絶乾kg、広葉樹が17.5円/絶乾kgであった。これらの販売単価は、すべて原木チップの白チップである。スギにはその他の針葉樹も含まれている。スギについては、49月期に比べて1012月期に僅かな単価の上昇が見られるが、13月期にはまた下降している。広葉樹の単価は一定であった。また、木質ボード用チップはスギの黒チップで、納入工場はニチハマテックス(株)大江工場であり、平成20年度の販売単価は10.4円/絶乾kgであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.3.1 土場に搬入された原木       写真2.3.2 トラックスケール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.3.3 移動式チッパー           写真2.3.4 ヒノキ間伐材

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.3.5 ヒノキ間伐材             写真2.3.6 チッパー

 

 

 

2. 4 チューモク(株)〈富山県〉

チューモク(株)は、富山県南砺市に所在し、木材チップ製造・販売の他、住宅建築・リフォーム、山林、バーク堆肥、木材・建材販売などの事業を行っている。チューモク(株)の木材チップ工場では、チッパー(太平製作所、定格出力150kW1台、バーカー1台(大日製作所)を使用して、製紙用の木材チップを生産している。従業員数はチューモク(株)全体で150名、うちチップ工場専任が5名となっている。木材チップの生産能力は年間12,000絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績は、スギ4,500絶乾重量トン、アカマツ800絶乾重量トン、広葉樹6,300絶乾重量トンの合計11,600絶乾重量トンである。したがって生産能力に対する生産実績の割合は97%である。木材チップ用のすべて原木であり、製材工場などの残材や解体材などを原料とする木材チップの生産は行っていない。エゾマツも多少あるが、生産量は月間600絶乾重量トン程度であり、製材工場が用材用として入荷したものの中で低質なものが入ってくるだけである。34年前まではロシアのシラカバも入ってきていたようである。

2.4.1は、平成20年度におけるチューモク(株)木材チップ工場の原木購入量と購入単価を示している。チューモク(株)木材チップ工場では、針葉樹、広葉樹ともにすべて素材買いで木材チップ用原木を購入しており、原木取引は生重量トン単位で行っている。平成20年度におけるチューモク(株)木材チップ工場の原木購入量は26.000生重量トンで、針葉樹が12,500生重量トン(全原木購入量の48%)、広葉樹が13,500生重量トン(全原木購入量の52%)である。平成20年度におけるチューモク(株)木材チップ工場の原木の購入平均単価は、49月期では針葉樹が5,000円/生重量トン、広葉樹が7,500円/生重量トン、103月期では針葉樹が5,200円/生重量トン、広葉樹が7,800円/生重量トンである。49月期と103月期を比較すると、針葉樹が200円/生重量トン、広葉樹が300円/生重量トンの購入単価の上昇が見られる。

 

 

 

 

 

 

チューモク(株)木材チップ工場では、素材を素材業者および森林組合から購入しており、その数量割合は素材業者が90%、森林組合が10%となっている。森林管理局・森林管理署等、県・市町村、素材生産者協同組合、原木市場、林家からは購入していない。原木の集荷範囲は80km圏内(半径40km圏内)であり、石川県全域、岐阜県、黒部地域などから集めている。取引のある素材生産業者は2030人であり、大きい業者にはチップ専門のところもあるが,個人の業者はたいてい用材用とチップ用の両方を扱っているとのことである。年間契約を結んでいる東北地方(秋田県など)からの出稼ぎ素材生産業者もあれば,作業道,支障木の伐採作業等も行っている東海方面の素材生産業者もあるとのことである。取引のある森林組合は富山県森連西部森林組合であり、富山県材はすべてこの森林組合と自社の山林部から原木を調達している。原木の受け入れは24時間行っている。原木はほぼ100%民有林からで、国有林からの原木はほとんどない。富山地域では地形的に間伐が難しいため、スギ間伐材はほとんど無い。皆伐したものを全幹集材し、用材に向かない部分がチップ用として搬出される。主として曲がり材や根曲がり材である。広葉樹はもともと炭焼き用の薪炭林だった林の二次林から伐採した原木が多く、ナラ類のほか、アベ、クヌギなどの樹種が中心である。だいたい25年ごとに伐採している。調査は11月に行ったが、122月は雪のため伐採が止まるとのことであり、原木が最も多い時期であったようである。

 チューモク(株)木材チップ工場の木材チップ原料の購入はすべて素材買いであるが、買い受け(検量)単位は、すべて商慣行によっている。すなわち、検量を重量で行い、樹種ごとの換算係数をかけて材積に換算しているとのことである。換算係数は、広葉樹が0.73m3/生重量トン、針葉樹が0.83 m3/生重量トンである。
 チューモク(株)木材チップ工場で生産された製紙用木材チップは、製紙会社へ100%直接販売される。納入製紙工場は高岡市にある中越パルプ工業(株)である。中越パルプ工業(株)には能町と二塚の2つの高岡工場があるが,そのうち高岡市米島にある高岡工場(以下,高岡工場(能町)と示す)に納めている。単価の仕切り場所は納入先工場渡しであり、単価契約方法は年間となっている。

 チューモク(株)木材チップ工場は、取引集荷業者である中越パルプ工業(株)より製紙用木材チップの品質基準を提示されている。その品質基準を表2.2.2に示す。木材チップの標準サイズは、長さ20mm、幅20mm、長さ3mmであり、目標とするチップサイズ範囲を、長さ1025mm、幅1025mm、厚さ25mmと定めている。また、長さが6mm以上25mm以下のチップが80%以上、25mm以上40mm以下のチップが15%以下になるように定めている。ただし、このチップサイズの規格には歩引きなどのペナルティーは課せられない。樹皮、腐れの混入は認められず、混入があった場合は全量を歩引き(納入重量からその分を差し引き)される。その他の欠点としては、異樹種、炭化に基準があり、どちらも混入は認められない。なお、ラワン材は使用不可の樹種とされているため全量異樹種扱いとなっている。スリーバは目開き40mmのスクリーンにオンのもので、許容量は4.0%以内で、4.0%以上の場合は、4.0%をこえる全量を歩引きされる。ダストは目開き6mmのスクリーンをパスしたもので、許容混入率は1.0%で、1.0%以上の場合は1.0%をこえる全量を歩引きされる。異物(金属、プラスチック、ビニール、砂礫、陶器類、油脂・塗料、接着剤付着など)の混入は認められず、混入があった場合は厳重注意・指導を受けることになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 チューモク(株)木材チップ工場と取引集荷業者である中越パルプ工業(株)との間には、製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定があり、契約量に満たない場合は後で納入制限を受ける。契約量を全うした場合や契約量を超えた場合は特段の措置はないとのことである。また、製紙用木材チップの検量方法は、すべて中越パルプ工業の検収の通りであり、チュウモク(株)側は検量方法がどのように決定しているのかわからないとのことである。製紙用木材チップの納入単価については、両者が協議して決定しており、内容も熟知しているとのことである。

 2.4.3は、チューモク(株)木材チップ工場の製紙用木材チップの販売単価を示している。納入製紙工場はいずれも中越パルプ工業(株)高岡工場(能町)であり、平成20年度49月期ではスギが19.4円/絶乾kg、アカマツが19.8円/絶乾kg、広葉樹が20.5円/絶乾kgであり、103月期ではスギが21.0円/絶乾kg、アカマツが19.8円/絶乾kg、広葉樹が21.5円/絶乾kgとのことである。これらの販売単価は、すべて原木チップの白チップである。49月期と103月期を比較すると、スギで1.6円/絶乾kg、ヒノキで1.0円/絶乾kg上昇しているが、アカマツは同価格である。前述したように原木価格も上昇しているので、これが製紙用木材チップの単価にいくらか反映されたとも考えられる。運賃は針葉樹、広葉樹ともに年間通じて1.5円/絶乾kgである。

チューモク(株)はバーク堆肥も製造している。年間生産量は15.000トン。製品の種類は、牛糞、鶏糞などの配合物の違いで約20種類あり、出荷量は種類により異なるが、200300袋のものから数万袋単位のものまである。自社ブランド製品のほか、富士見工業の製品も製造している。大部分は土木工事用の土壌改良材で、のり面吹き付け用や緑化資材用であり、農業用のバーク堆肥は少ないようである。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.4.1 広葉樹原木            写真2.4.2 針葉樹原木

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.4.3 トラックスケール         写真2.4.4 トラックの計量器

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.4.5 ドラムチッパー          写真2.4.6 ディスクチッパー


 

 

 

 

 

 

 

写真2.4.7 測定したスギ間伐材        写真2.4.8 バークヤード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.4.9 製品(緑化資材)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.5 (株)南栄〈熊本県〉

(株)南栄は、熊本県八代市に所在し、木材チップ製造・販売、木くず・バークの粉砕処理、造林、木材の生産販売、山林伐出請負、土木などの事業を行っている。株)南栄は、砥用工場(美里町)、深田工場(球磨郡あさぎり町)、港工場(八代市)、志布志工場(鹿児島県志布志市)、日向工場(宮崎県日向市)の5つの木材チップ工場で製紙用チップを生産している。チッパーは各工場1台ずつの計5台である。従業員数は5工場合計で23人であり、すべてチップ工場専任である。木材チップの生産能力は5工場すべてあわせて54,000絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績はスギとヒノキが合わせて38,600絶乾重量トン、アカマツ4,500絶乾重量トン、広葉樹33,600絶乾重量トンの合計76,700絶乾重量トンである。したがって、生産能力に対する生産実績の割合は142%である。生産実績が生産能力を上回っているのは、生産能力は平日18時間フル稼働した場合を想定しているが、(株)南栄では現在のところ残業や休日出勤などでもチップを製造しているためである。木材チップ用の原料は100%原木であり、廃材などを原料とする木材チップの生産は行っていない。

 

 

2.5.1は、平成20年度における(株)南栄の木材チップ工場5工場分の原木購入量と購入単価を示している。(株)南栄では、針葉樹、広葉樹とも立木買い、素材買いの両方で木材チップ用原木を購入しており、原木取引の単位は、立木買いの場合は材積(m3)で、素材買いの場合は生重量トンで行っている。平成20年度における(株)南栄の木材チップ工場5工場の原木購入量は立木買いが19,500m3で、素材買いが158,700生重量トンである。立木買いのうち、針葉樹が6,000m3(立木での原木購入量の31%)、広葉樹が13,500m3(立木での原木購入量の69%)であり、素材買いのうち、針葉樹が94,400生重量トン(素材での原木購入量の59%)、広葉樹が64,300生重量トン(素材での原木購入量の41%)である。立木買いでは広葉樹が多く、素材買いでは針葉樹が多くなっている。平成20年度における(株)南栄の原木の購入平均単価は、49月期では立木買いの針葉樹が4,200円/m3、立木買いの広葉樹が8,700円/m3、素材買いの針葉樹が3,100円/生重量トン、素材買いの広葉樹が6,200円/生重量トンであり、103月期では立木買いの針葉樹が4,200円/m3、立木買いの広葉樹が8,700円/m3、素材買いの針葉樹が3,200円/生重量トン、素材買いの広葉樹が6,200円/生重量トンである。49月期と103月期を比較すると、素材買いの針葉樹が100円/生重量トンの購入単価の上昇が見られる。

(株)南栄の木材チップ工場(5工場)では、立木を森林管理局・森林管理署、県・市町村、林家から購入しており、その数量割合は森林管理局・森林管理署が58%、県・市町村が22%、林家が20%となっている。素材は森林管理局・森林管理署、素材業者、素材生産者協同組合、原木市場、林家から購入しており、その数量割合は、森林管理局・森林管理署が1%、素材業者が59%、素材生産者協同組合が7%、原木市場が19%、林家が14%となっている。原木の集荷は半径30km圏内ぐらいで、ほぼ九州一円から集めているようである。

間伐材からのチップ製造は、平成2110月より港工場で行っている。最近になって深田工場でも間伐材を使用するようになっている。間伐材は主として国有林のシステム販売のC材であり、日南、鹿児島から集荷している。間伐材チップはすべて日本製紙に納入され、製造された紙はグリーン購入法コピー用紙となる。間伐材の証明については、熊本県はスムースに認可が下り、鹿児島はもうすぐ下りる予定とのことだが、宮崎はまだ下りないようである。国有林の利用間伐については認定が容易だが、民有林の証明は難しいとのことである。間伐材については、完全に分別して管理しており、原料とストックに係るスペースの問題がある。平成20年より製紙工場からの要請で増産したが、原木が足りず、市場で高い原木(7,000円/m3)も購入して集めた。

(株)南栄の木材チップ原料の買い受け(検量)単位は、立木買い、素材買いともに商慣行によっている。検量を重量で行い、樹種ごとの換算係数をかけて材積に換算する場合の換算係数は、0.7m3/生重量トンである。
 (株)南栄の5つの木材チップ工場で生産された製紙用木材チップは、集荷業者へ100%販売され、直接製紙工場へ納入される。取引集荷業者は日本製紙木材(株)のみで、納入製紙工場は日本製紙(株)八代工場である。単価の仕切り場所は納入先の製紙工場渡しであり、単価契約方法は四半期毎となっている。

 (株)南栄の5つの木材チップ工場は、取引集荷業者である日本製紙木材(株)より製紙用木材チップの品質基準を提示されている。その品質基準を表2.5.2に示す。木材チップのサイズの許容範囲は、長さ550mm、幅1530mm、厚さ35mmとなっている。樹皮の許容混入率は、試料1.0kg中の混入率10.0%以内で、混入していた場合は10.0%をこえる全量を歩引きされる。スリーバの許容混入率は、試料1.0kg60mm網目オンのもの10.0%以内で、混入率が10.0%以上の場合は10.0%をこえる全量を歩引きされる。節、腐れ、その他欠点にも基準があり、明確な基準は今回の調査ではわからなかったが、許容量をこえる場合はその分を歩引きされる。異物(金属、プラスチック、ビニール、砂礫、陶器類、油脂・塗料、接着剤付着など)の混入は不可となっている。

 

 

 (株)南栄と取引集荷業者である日本製紙木材(株)との間には、製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定があるが、契約量に満たなくても特に問題はなく、契約量を全うしても、契約量を超えた場合も特段の措置はないとのことである。また、製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、両社が協議して決定しており、内容も熟知しているとのことである。

 

 

 2.5.3は、(株)南栄の製紙用木材チップの販売単価を示している。納入製紙工場はいずれも日本製紙(株)八代工場であり、平成20年度49月期ではスギが16.0円/絶乾kg、アカマツが17.0円/絶乾kg、広葉樹が18.0円/絶乾kgであり、103月期ではスギが17.0円/絶乾kg、アカマツが18.0円/絶乾kg、広葉樹が18.0円/絶乾kgとのことである。これらの販売単価は、すべて原木チップの白チップである。49月期と103月期を比較すると、スギとアカマツにおいて1.0円/絶乾kgの単価の上昇が見られる。

 

以上は、南栄の5つの木材チップ工場全体での話であるが、今回はそれらのうち深田工場と港工場に実際に赴き調査を行った。

港工場は、平成137月に設立され、チッパー(富士鋼業製キングチッパー450W、定格出力130kW1台、バーカー2台(CKSチューキ製スーパーバーカー08D502連)を使用して、製紙用の木材チップを生産している。従業員数は5名である。木材チップの生産能力は年間12,000絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績は9,600絶乾重量トン、生産能力に対する生産実績の割合は80%である。前述したが、港工場では間伐材を原料として製紙用チップを生産している。その生産量は月間170絶乾重量トンである。

 深田工場は平成195月に設立されたが、深田工場は旧球磨十条チップ(株)の解散に伴い、南栄が所得したものである。深田工場では、チッパー(CKSチューキ製ウルトラ605-3、定格出力150kW1台、バーカー1台(CKSチューキ製スーパーバーカー08D502連)を使用して、製紙用の木材チップを生産している。従業員数は5名である。木材チップの生産能力は年間18,000絶乾重量トンであり、平成20年度の生産実績は18,000絶乾重量トン、生産能力に対する生産実績の割合は100%である。

 平成218月には産業廃棄物処分業の資格を取得し、球磨リサイクルセンターを設立している。球磨リサイクルセンターでは、自走式破砕機(Husky社製PG1500T525馬力)、バーク粉砕機2台(ヒロタ製HSC-W10045kW2台)を使用して木くず(バークや端材、枝条)などを破砕して、家畜敷料や燃料として販売している。


 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.1 ヒノキ原木(港工場)     写真2.5.2 ラインへの原木投入(港工場)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.3 ディスクチッパー(港工場)    写真2.5.4 バーカー(港工場)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.5 ヒノキチップ(港工場)     写真2.5.6 針葉樹原木(深田工場)


 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.7 ドラムバーカー(深田工場)    写真2.5.8 チッパーへの投入(深田工場)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.9 スクリーン(深田工場)      写真2.5.10 チップヤード(深田工場)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真2.5.11 自走式破砕機          写真2.5.12 バーク粉砕機

 

 

2.6 調査5事例のまとめ

  間伐材チップの生産と取引実態について、全国5地域の木材チップ工場、すなわち、丹治林業(株)(北海道)、(株)箱崎林業(福島県)、(株)佐合木材(岐阜県)、チューモク(株)(富山県)、(株)南栄(熊本県)において調査を行った。丹治林業(株)、(株)箱崎林業、チューモク(株)では1工場、(株)佐合木材では2工場(株)南栄では5工場を調査対象とした。

 2台のバーカーを有する(株)箱崎林業と(株)南栄の1工場を除いて、各工場とも1工場あたりバーカー1台、チッパー1台で木材チップを生産している。チッパーの定格出力は、150kW170kWとなっている。木材チップ製造に従事している従業員数は、丹治林業(株)が専任2名、(株)箱崎林業が専任2名兼任1名、(株)佐合木材が専任5名兼任4名(2工場合計)、チューモク(株)が専任5名、(株)南栄が23名(5工場合計)である。(株)佐合木材では原木チップ工場と廃材チップ工場とで木材チップを生産しているが、その他の調査対象工場では原木チップ専門の生産となっている。平成20年の木材チップ生産実績は、丹治林業(株)が17,000絶乾重量トン(生産能力の69%)、(株)箱崎林業が11,360絶乾重量トン(生産能力の77%)、(株)佐合木材が6,300絶乾重量トン(原木チップ4,800絶乾重量トン、廃材チップ1,500絶乾重量トン)(生産能力の原木チップ32%、廃材チップ27%)、チューモク(株)が11,600絶乾重量トン(生産能力の97%)、(株)南栄76,700絶乾重量トン(生産能力の142%)である。地域差によるものか、工場特有の差なのか明白ではないが、工場によって稼働率が異なっている。特に、(株)佐合木材の生産量が能力に対して少ないが、地域の素材生産量や製材生産量の減少からチップ用原木や製材工場廃材が減少しているためとのことである。一方、(株)南栄では、残業や休日出勤で対応して能力以上の生産を行っている。

 表2.6.1は、平成20年度における調査対象木材チップ工場の原木購入量と購入単価を示している。(株)箱崎林業と(株)南栄とが立木買いと素材買いを行っているが、他3調査対象工場は素材買いのみである。立木買いの取引単位は、(株)箱崎林業と(株)南栄ともにm3である。一方、素材買いの場合、丹治林業(株)、(株)箱崎林業、(株)佐合木材およびチューモク(株)の取引単位がm3、(株)南栄が生重量トンと異なっている。しかし、丹治林業(株)、(株)箱崎林業、(株)佐合木材およびチューモク(株)でも検量は重量で行い、係数を掛けて材積に換算している。換算係数は、丹治林業(株)では針葉樹0.75m3/生重量トン、広葉樹0.7 m3/生重量トン、(株)箱崎林業では広葉樹0.7 m3/生重量トン、マツ類0.8 m3/生重量トン、スギ0.85 m3/生重量トン、佐合木材(株)の場合0.7 m3/生重量トン、チューモク(株)の場合針葉樹0.83 m3/生重量トン、広葉樹0.73 m3/生重量トンとなっている。((株)南栄の重量から材積に換算する場合の換算係数は0.7 m3/生重量トン)。地域や樹種、品種によって原木の含水率や密度が異なることを考慮して決定されているのであろうが、より透明性を高めるため、科学的データに基づいて決定される必要もあるであろう。

 立木買いの平均単価は、(株)箱崎林業では針葉樹900円/m3,広葉樹1,350円/m3であり、(株)南栄では針葉樹4,200円/m3,広葉樹8,7000円/m3である。両社の平均単価に大きな相違があるが、(株)箱崎林業の場合は素材生産費を含めない単価で、(株)南栄は素材生産費を含めた単価であることによる相違であると考えられる。素材買いの針葉樹の平均単価は、樹種の違いもあるが、丹治林業(株)の4,000円/m3が最も低く、佐合木材(株)の8,250円/m3が最も高かった。佐合木材(株)の場合、地域の素材生産量全体の減少により、チップ用原木の確保が困難となり、平均単価が他の調査対象工場より高くなったものと考えられる。素材買いの広葉樹の平均単価は、佐合木材(株)の7,650円/m3が最も低く、(株)南栄の6,200円/生重量トン(8,800円/m3)が最も高かった。こちらも地域差が見られる。なお、平成20年度の49月期と103月期の素材買いの平均単価を比較すると、(株)箱崎林業の針葉樹、広葉樹、チューモク(株)の針葉樹、広葉樹、(株)南栄の針葉樹で103月期のほうが高くなったが、(株)佐合木材では針葉樹、広葉樹とも低くなった。

 

 

 

 立木の購入先は、(株)箱崎林業が森林組合20%、林家80%であり、(株)南栄が森林管理局・森林管理暑58%、県・市町村22%、林家20%であり、それぞれが異なった傾向を示している。チップ用素材の購入先としては、どの調査対象工場とも素材業者が大半を占めている(丹治林業(株)70%、(株)箱崎林業90%、(株)佐合木材50%、チューモク(株)90%、(株)南栄59%)。(株)佐合木材、チューモク(株)および(株)南栄はチップ用素材の約2割を原木市場から購入しているが、丹治林業(株)および(株)箱崎林業は原木市場からの購入がない。

 木材チップ原料(素材)の買い付け(検量)単位は、丹治林業(株)がチップ団体等の取り決め、(株)箱崎林業、(株)佐合木材、チューモク(株)および(株)南栄が商慣行によるものである。いずれの調査対象工場も検量は重量(単位:生重量トン)で行い、丹治林業(株)がチップ団体等の取り決め、(株)箱崎林業、(株)佐合木材、チューモク(株)では係数を掛けて材積に換算している。前述したように、その換算係数は、丹治林業(株)では針葉樹0.75m3/生重量トン、広葉樹0.7 m3/生重量トン、(株)箱崎林業では広葉樹0.7 m3/生重量トン、マツ類0.8 m3/生重量トン、スギ0.85 m3/生重量トン、佐合木材(株)の場合0.7 m3/生重量トン、チューモク(株)の場合針葉樹0.83 m3/生重量トン、広葉樹0.73 m3/生重量トン、また、(株)南栄が重量から材積に換算する場合の換算係数は0.7 m3/生重量トンである。

 丹治林業(株)、佐合木材(株)およびチューモク(株)で生産された製紙用木材チップは100%直接製紙会社へ販売される。一方、(株)箱崎林業および(株)南栄で生産された製紙用木材チップは100%集荷業者へ販売されるが、木材チップは直接製紙工場に納入される。集荷業者は(株)箱崎林業、(株)南栄とも製紙会社の関連木材商社である。納入先製紙会社は、丹治林業(株)および佐合木材(株)が2社、(株)箱崎林業、チューモク(株)および(株)南栄が1社である。単価の仕切り場所は、丹治林業(株)の納入先1工場のみが自社サイロ下で、他は全て納入先の製紙工場渡しである。納入先製紙工場渡しの場合、単価は運賃を考慮して決定されているが、必ずしも木材チップの単価と運賃の単価が示されているとは限らない。このため、木材チップ工場が木材チップのみの単価を正確に把握していることが少ない。木材チップの単価決定の透明性を高めるためには、納入先製紙工場渡しの場合でも、木材チップの単価と運賃の単価を示していくことが重要であると考えられる。

 表2.6.2は、調査対象木材チップ工場への製紙用木材チップの提示品質基準を示している。木材チップの長さは調査対象工場により異なっているが、概ね550mm程度で平均20mm程度ある。しかし、佐合木材(株)では1625mmと許容範囲が他の調査対象工場と比べて長さの範囲が狭い。木材チップの幅と厚さについては、必ずしも提示されているとは限らない。樹皮、スリーバおよびダストについては、調査対象工場により異なっており、全く認めないものから10%まで認めるもの調査対象工場による差異が大きい。欠点については、腐れについての許容混入率をほとんどの調査対象工場で提示されており、5%以内もしくは混入しないものとなっている。ここに示しているのは許容値であり、これより低い閾値を設定し、閾値を超えた分について分引きするなどが行われている。異物の混入については、どの調査対象木材チップ工場に対しても製紙工場から厳しい品質基準が提示されており、異物の混入は認められていない。

 

 

 

 

 調査対象工場と取引集荷業者もしくは納入先製紙工場との間に製紙用木材チップの契約数量と納入数量についての規定は、丹治林業(株)、(株)箱崎林業、チューモク(株)、(株)南栄において定められており、(株)佐合木材では定められていない。チューモク(株)では契約数量に満たなかった場合に次回契約において納入制限を受けるが、その他の調査対象工場では納入数量が契約数量を満たしても満たさなくても超えても特段の措置はないとのことである。また、製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、丹治林業(株)、(株)箱崎林業および(株)南栄では取引集荷業者や納入先製紙工場と協議して決定しており、内容も熟視しているとのことである。(株)佐合木材では取引先の方法に従っており、内容を熟知していないとのことである。チューモク(株)では納入単価については納入先製紙工場と協議して決定しており、内容も熟視しているとのことであるが、検量方法は全て納入先製紙工場の検収のとおりで、どのように決定しているかについてはわからないそうである。製紙用木材チップの検量方法および納入単価については、その透明性を高めるためにも、木材チップ工場と取引集荷業者や納入先製紙工場との協議により決定されることが重要であり、木材チップ工場においても製紙用木材チップの検量方法について熟視しておくこと(取引集荷業者や納入先製紙工場が十分に説明すること)が必要であると考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 表2.6.3は、調査対象木材チップ工場の製紙用木材チップの販売価格を示している。地域、樹種および納入先製紙工場との距離が異なるので単純に比較はできないが、平成2046月期と13月期を比較すると、横ばいであった南栄(株)の広葉樹を除いて、製紙用木材チップの販売価格は13月期ほうが高くなっている。また、針葉樹と広葉樹を比較すると広葉樹のほうが高く、スギが18円/絶乾kg程度、アカマツと広葉樹が19円絶乾kg程度である。