はじめに

 

わが国の木材消費量の約50%を占めるパルプ・チップは、その7割が海外原料に依存している。国内の木材チップは主に製紙原料、木質ボ−ド原料などのマテリアル利用に仕向けられているが、近年では化石エネルギ−の代替として燃料やエネルギ−変換技術による液体燃料などサーマル利用への途が拓かれつつあり、政府、各省庁、産業界あげて化石燃料からバイオマス燃料への利用促進策、低炭素社会の構築への取組のほか、林野庁ではCO吸収源としての森林の諸機能の向上を狙いに、平成19年から6年間で330haの間伐実施計画を打ち出している。特に間伐事業の促進には、間伐材の利用拡大への取り組みを併行して進めなければならないが、その大きな柱は間伐材のチップ利用にある。

一方で、紙需要は世界的な景気後退により伸び悩んではいるが、中長期的には、新興国の経済成長に伴う紙需要の高まりも予想され、パルプ・チップの需給がタイト化するとも言われ、海外資源に大きく依存しているわが国では原料の安定的な確保とともに為替問題や価格上昇への不安感もある。このような情勢下で、わが国では、国内の未利用材、低位利用材の利活用により国産材の利用率を高めていこうとする検討が進められてきている。

 この間伐材のチップ利用拡大に対して林野庁では、平成21年度に続き平成22年度においても「製紙用間伐チップの安定供給支援事業」を公募事業として予算化され、当工業連合会では、今年度も本事業に応募して採択され、実施主体として製紙用チップ・チップ用原木の安定取引普及事業と製紙用間伐材チップの安定供給体制整備事業の2課題に取り組んできた。

 本報告書は、上記2課題のうち、製紙用チップ・チップ用原木の安定取引事業の実施成果を取り纏めたものである。この事業は、チップ原木及びチップの現実の取引で不透明な部分が多い検量分野について、先ずその実態調査を踏まえて問題点の摘出とその改善方向の課題を明確にし、次ぎに検量の基礎となる原木及びチップの形状・質量に関する科学デ−タの収集と分析を行い、昨年度の調査結果も加味して関係者に提供すること狙いに実施した。

 本事業の計画・実施の実施に当たり、終始ご指導を賜った各委員並びに現地調査でご協力を頂いたチップ業界、チップ受入調査で情報提供頂いた紙パ業界の皆様に厚く感謝するとともに、本報告書が関係各位の業務の指針として利用されることを期待する。

 

平成23年3月

全国木材チップ工業連合会

会 長 岩  

 

 

 

製紙用チップ・チップ用原木の安定取引普及事業

調査・分析事業報告書

 

目  次

 

はじめに

1.チップ原木とチップの検収・検量方法  

 1.1 国内の木材チップ原料とチップ生産の概況  ・・・・・・・・・

 1.2 チップ原木の受入検収と検量方法  ・・・・・・・・・・・・・

 1.3 製紙工場におけるチップの受入検収と検量方法  ・・・・・・・

 1.4 まとめ  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.間伐材チップの生産と取引実態 〜チップ工場の事例調査から〜

2.1 佐藤木材工業株式会社<北海道>  ・・・・・・・・・・・・・

2.2 葛巻林業株式会社 <岩手県>   ・・・・・・・・・・・・・

2.3 丸和林業株式会社 <高知県>   ・・・・・・・・・・・・・

2.4 北菱林産株式会社 <岩手県>   ・・・・・・・・・・・・・

2.5 調査4工場のまとめ        ・・・・・・・・・・・・・

3.間伐材チップの受け入れ実態 〜製紙工場の事例調査〜

3.1 事例1 A工場<北海道>     ・・・・・・・・・・・・・

3.2 事例2 B工場<岩手県>     ・・・・・・・・・・・・・

3.3 事例3 C工場<愛媛県>     ・・・・・・・・・・・・・

3.4 事例4 D工場<静岡県>     ・・・・・・・・・・・・・

3.5 事例5 E工場<静岡県>     ・・・・・・・・・・・・・

3.6 調査5事例のまとめ        ・・・・・・・・・・・・・

4.チップ用原木の形質

4.1 はじめに             ・・・・・・・・・・・・・

4.2 測定項目、測定方法        ・・・・・・・・・・・・・

4.3 結果               ・・・・・・・・・・・・・

5.チップ品質

5.1 チップの採取           ・・・・・・・・・・・・・・

5.2 チップの含水率          ・・・・・・・・・・・・・・

5.3 チップの品質           ・・・・・・・・・・・・・・

5.4 チップの粒子径分布        ・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

1.チップ原木とチップの検収・検量方法

 

1,1 国内のチップ原料とチップ生産の概況

最近の木材チップの市場規模は、平成1516年当時の年間33,600万t(絶乾重量)台から20年に2,057万t、211,561万tと減少している。この減少は利用先の主体を占めている紙パルプ産業の需要落ち込みに起因しているが、利用割合では現在でも80%強は製紙用パルプ原料であり、続いて繊維板・パ−ティクルボ−ド原料に約1012%、燃料用に約78%、家畜敷料等その他に2%程度が仕向けられている。また製紙用パルプ原料に限れば、その70%は輸入チップ、30%が国産チップで賄われている。

 

ここでは、国内チップ需要量の30%を占めている国産チップを主体にして、その製造工場である木材チップ工場の原料と生産事情の概要について、本事業の平成2122年度調査結果を基にして述べることにする。

 

平成21年の国産チップは、1,310の専門工場と353の兼業工場で513万tが生産されており、原料には原木47%、工場残材33%、廃木材18%、林地残材2%が利用されている。なお専門工場は主として原木を、兼業は製材工場が殆どであることから製材廃材である背板や端材を主原料にしている。

 原木を利用する工場では、針葉樹、広葉樹のいわゆるチップ・パルプ材としての立木、もしくは素材で購入するが、立木購入の場合は自己造材もしくは他社に素材生産を委ねて素材の形で工場に搬入する。専門工場のチップ原料は、全消費量の85%は素材購入で、また15%が立木で手当しているが、針葉樹では90%、広葉樹では60%が素材で購入している。素材の購入先は65%までが素材生産業者、立木の購入先では46%が林家である。なお工場廃材を利用する工場では、製材工場を例にすれば原木消費量の1215%が背板や端材として排出されることから、これらが製材ラインに付帯するチッパ−で処理されている。

 国産チップは、原木利用では針葉樹30数%、広葉樹60数%の割合で生産されており、針葉樹では50数%がスギ、次いでアカマツ25%弱、ヒノキ10%、カラマツ8%となっている。また広葉樹チップはナラ類やカバ類が中心である。なお背板チップではスギ2/3、ヒノキとアカマツで1/3に相当している。国産チップは原木利用と背板利用は殆どが製紙用パルプ向けであるが、廃木材や近年増加傾向を示している林地残材利用のものは木質ボ−ド原料や燃料用に仕向けられている。なおチップ工場のチップ販売は、製紙用パルプや木質ボ−ド向けの場合、需要工場への直販・納入分と集荷業者を介して製紙工場やボ−ド工場へ納入するものがほぼ半々になっている。製紙用パルプや木質ボ−ド向けのチップには、需要工場の生産する製品種によって工場毎に一定の受入基準があり、サイズや異物の混入率などに制限値が設けられており、納入工場側の検収と検量方法により実際の取引価格が決められている。このことがチップ工場側の思惑と実際上の取引価格にしばしば差違をもたらすこともある。しかしチップ工場側としても独自で品質検査を行うような体制が整っている場合が少ないため、このことに関する対処策を難しくしている。

 以下、原料ではその供給側である素材生産業者等と受入側のチップ工場、またチップではその供給側であるチップ工場とその受入側の製紙工場を対象にして、それぞれの一般的な検収方法と検量方法の実態を調査結果から集約することにする。なお、ここでチップ原木及びチップの検収や検量の分野で通常用いられる計測用語について、表1.1に示す。

1.1   チップ原木、チップ検収・検量の計測用語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用語

計算式

適用分野

 

含水率(%)

湿量基準       (ウエットベ−ス)

Uw(%)

W-Wo

×100

Uw

含水率

パルプ・チップ原木

 

W

W

生重量

 

 

 

 

 

 

W0

絶乾重量

 

 

 

乾量基準       (ドライベ−ス)

U(%)

W-W0

×100

U

含水率

一般丸太、製材品

 

Wo

W

生重量

 

 

 

 

 

 

 

W0

絶乾重量

 

 

 

絶乾重量(g、kg、t)

W0

W×

100

W0

絶乾重量

木材チップの絶乾重量

 

100Ud

W

生重量

単位:BD

は、

 

 

 

 

 

U

含水率

[Bone Dry ton]の略

 

容積密度(g/㎤、kg/㎥)    (湿量もしくは乾量基準)

R

WまたはW0

R

容積密度

木材、チップの容積

 

V

W0

絶乾重量

は、通常、材積㎥

 

 

 

 

 

V

容積

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注1.生重量とは、水分を含んだ(含水状態)の木材、木材チップの重量で、単位当たり重量は樹種や含水

 

   率により大きく異なってくる。

 

 2.絶乾重量とは、試料を恒温器に入れ105±35℃で完全に水分がなくなるまで乾燥した時の重量。

 

 

 

 

1.2 チップ原木の受入検収と検量方法

 チップ原料の購入単位には、材積㎥、層積㎥、生重量トンが用いられるが、一般に立木は材積、素材は生重量が用いられる。チップ・パルプ原木は素性が悪い丸太のほかに太物から細物までの枝条も含まれるため、末口二乗法による材積㎥では大径のものは実材積より検知材積が小となり、小径ではこの逆になることが多い。また材を直方体に積み上げて、3辺を測定し、実積率を乗じて求める層積㎥では実積率が材の形状、径の大小、長さ、樹皮の有無等で異なり、積み方や詰め方によっても違ってくる。その意味では重量法が好ましいといえよう。

1.2はチップ工場の原木受入で実際に採用されている購入単位を件数別に示したものである(調査対象:36工場分)。表示のように立木では約90%が材積㎥であり、素材では材積㎥、層積㎥で受入する場合も若干存在しているが、約70%は生重量で検量している。

 重量法では、一般的には原木を積載したトラックをトラックスケ−ルで計測し、その値から空荷のトラック重量を差し引いて原木の生重量としている。なお多くの場合、恒常的に用いるトラックには、車両毎に予め空荷車両の重量を量り、供給側と受入側でデ−タを持ち合わせいるのが実態である。

 

 

 表1.2 チップ原木の検量方法別件数

                          (単位:件数、%)

立 

素材

針広

チップ工場の原木受入(検量方法

材積

層積

生重量t

針葉

15(88.2)

0

2(11.8)

17(100.0)

広葉

17(89.5)

0

2(10.5)

19(100.0)

針葉

5(13.5)

6(15.0)

29(72.5)

40(100.0)

広葉

6(13.6)

7(15.9)

31(70.5)

44(100.0)

資料:木材チップの生産・取引関係に関する実態調査(全国木材チップ工業連合会、

平成21年度アンケ−ト実施)

 

  生重量で計量した原木は、実際の取引では、通常、これに一定の係数を乗じて「容積(材積)㎥」に換算して代金決済を行うのが商慣行になっている。

1.3はチップ工場が素材生産者等の原木供給者に代金決済を行う場合に採用されている取引単位を件数別に示したもので(調査対象:35工場分)、立木では90%以上、素材では76%以上が材積㎥で仕切っている。

生材重量を容積㎥に換算するには、理論的には生材状態もしくは全乾状態の体積を算出して換算係数を求めることになる。この換算係数は一般に「チップ原木の容積換算係数」と称している。この係数は容積密度と含水率によって算出するが、この場合の含水率は、チップ原木については木材に含まれる水分量を湿潤重量で除して算出(湿潤基準、ウエットベ−ス含水率)するのが一般的であって、一般の丸太や製材品では全乾重量を基準する含水率(乾量基準、ドライベ−ス含水率)とは異なっている。しかし木材の含水状態は樹種や径級、産地より異なり、しかも季節毎の伐倒から工場搬入までの期間によっても異なってくるため、木材の容積密度と水分の関係を基礎に標準的な換算係数を把握するには膨大なサンプルと時間を要する。このため、多くの場合、実際の取引では過去の典型調査を参考にして、各チップ工場における長年の経験値によって係数決定しているのが実態である。

その一例を本事業で調査対象とした9工場の換算係数を針葉樹、広葉樹別に表1.4に示す。

1.3  チップ原木の取引方法別件数

                         (単位:件数、%)

立 

素材

針広

チップ工場の原木取引単

材積

層積

生重量t

針葉

15(100.0

0

0

15(100.0)

広葉

17(89.5)

0

2(10.5)

19(100.0)

針葉

29(76.3)

2(5.3)

7(18.4)

38(100.0)

広葉

31(77.5)

2(5.0)

7(17.5)

40100.0)

資料:表1.2に同じ。

 

1.4   調査工場における検量単位から取引単位への変換係数

(容積換算係数)

変換単

調査工

針葉

広葉

生重量t

→材積

1.北海

0.75(カラマツ、トドマツ等

0.70

2.岩手

0.680.72(スギ、カラマツ、アカマツ

0.67

3.岩手

0.68

0.67

4.福島

0.80(アカマツ)0.85(スギ

0.70

5.岐阜

0.70(スギ

0.70

6.富山

0.83(アカマツ、スギ

0.73

7.高知

0.70(スギ、ヒノキ

0.70

8.熊本

0.70(スギ、アカマツ、ヒノキ

0.70

層積

→材積

9.北海

0.40(トドマツ)、0.380.5(カラマツ

0.300.40

資料:平成2122年度実施の木材チップ9工場のヒアリング調査による。

 

 

1.3 製紙工場におけるチップの受入検収と検量方法

 製紙工場におけるチップの一般的な受入検収と検量システムの概要を図1.1に示す。

製紙工場のチップ調達は、原則的に取引するチップ工場に対して原木チップもしくは背板チップ別とその樹種、月間もしくは四半期、半年、1年当たりの納入数量、納期等を明記した発注書を発行し、チップ工場側からは承諾書に搬入車両の車種と登録番号、車体重量を記載した書類を受け取り、これを基にして車両ごとに登録票を発行する。

以上の手順によりチップ工場から製紙工場へチップを積載した車両が搬入される。搬入されたチップは、まずその重量を計測するが、これを「検量」といっている。次ぎにチップの荷下ろし過程もしくは荷下し後、あるいはコンベア−移送中でチップの含水率、サイズ、樹皮や節、枯損部、木質以外の異物などを検査するためのサンプルを車両毎に採取する。この品質検査と検量を合わせて「検収」と称している。

チップ検量では、積載車両の総重量をトラックスケ−ルで計量、荷下ろし後に空荷状態の車両重量を再びトラックスケ−ルで計量して、総重量から車両重量を差し引いてチップ重量を求める。図中の例で云えば、20tトラックでチップを積載した状態の総重量が29,380kgで、空車両の重量が15,500kgとすれば、生状のチップ重量は13,880kgとなる。

次ぎに製紙工場によって採取量は異なるが、チップの品質検査用サンプルとして、図示の例では車両毎の積み荷から1,0002,000gを採取し、容器内で満遍なく攪拌した後に含水率測定用に4001,000g、品質検査用に600800gを充当する。チップの含水率は、絶乾重量法で測定し、計算で求める。例では絶乾率63.5%であったとすれば、上記した生重量13,880kgに絶乾率を乗じて絶乾重量が8,810kgと表される。また品質検査では、サンプル量から製紙工場毎に定めるサイズの制限範囲やバ−ク等の混入率を基にして基準値を超えるものの重量を計量する。図中の例ではこれらの重量比がオ−バサイズで4%、ダスト混入が3%、節・腐れ付着等が1%あったとすれば、これらの計8%、705kgが基準値を超えた重量と見なされ、先に求めた絶乾重量よりこの分を差し引き(歩引き量という)、これを取引対象の実重量8,105kgとなり、これに単価を乗じて決裁される。したがってチップ工場側とすれば、納入実量が即、取引実量と見なされているようではあるが、実取引では絶乾量から品質検査で歩引き分を減じたものが取引実量になっているのである。もちろん含水率測定用や品質検査用のためのサンプル採取の方法や数量に問題は無いとはいえないが、現状では多数の工場から納入される大量のチップを迅速に検量・検収を行い、スピ−ディに代金決裁するためには現行のシステムは、ある意味ではやむを得ないともいえよう。なお、歩引きとは重量から差し引きする分ではあるが、基 

製紙会社・資材部                   

@    発注書発行

(樹材種、数量、納期)    

 
  

                    木材チップ会社

A承諾書発行、搬入車両届

(車種・番号・車体重量

 
 

 


登録票発行(車両毎)

 
                                     

                    チップ搬入時携帯

 


搬入時:総重量計測(トラックスケ−ル)

荷下ろし(ダンパ−操作)

搬出時:空車重量計測(トラックスケ−ル)

(総重量・空車重量は全車自動計測)

(計測例:積載車量20t)

総重量29,380kg・・・・・・@

空車重量15,500kg・・・・A

生チップ重量@−A:13,880kg

    <チップ搬入>

 

登録票・納品書入力

 

チップ積載量

(車両総重量−空車重量)

<チップ検収・検量方法>

チップサンプル採取(1,0002,000g/車両)

(自動採取機、バケツ、柄杓等で採取、攪拌)

含水率測定用(4001,000g

(乾燥機、測定は絶乾法)

<絶乾率K

 

品質検査用(600800g

サイズ分布(自動篩い分け機

節付き、腐朽、異物等混入

 

チップ絶乾重量(BDT

    T=K×A(生重量)

(計測例

K63.5%A13,880kg

T=13,8800.635=8,813.8kg

       ≒8,810kg

歩引率(Q):サンプル中の不良品等の重量

(計測例)

 オ-バサイズ4%、ダスト3%、その他2%

実受入チップ重量(C-BDT): 

 8,810  8,810×0.04+0.03+0.01 

 ≒8,105kg

 

1.1   製紙用チップの受入検収・検量システム

 1.5 製紙用チップ受入基準の例

 

購入チップ受入基準書

 

                ○○製紙(株)○○工場資材調達部

 

1.規格

(1)  受入樹種 針葉樹チップ、広葉樹チップ

(2)  標準チップサイズ

  厚さ: 3.5mm

   長さ:18.0mm(繊維方向)

   22.0mm

(3)  集中度

 チップの厚さ2.05.0mmのものが70%以上を占めること。

(4)  品質

(イ)  樹皮、腐朽及び異樹種のチップは混入しないこと。混入の場合には、

混入分を全量歩引きする。なお混入が多い場合は、単価を値引きする。

(ロ)  焼損チップ、塗料・接着剤等付着のチップ、プラスチック類、金属類、アスファルト、土砂等、木質以外の異物混入はあってはならない。混

入の場合は原則として返却する。

2.品質基準

 A・・・・単価値引がないもの

B・・・・単価値引きがあるもの(単価引きは最大10%)

 

品質基

歩引

単価値

ダス

0.3mm篩通過分は重量比0.5%までは許

0.6%以上は全量歩

B

オ−バ−サイ

(スリ−バ含む

チップ最長36mmまでは許容。36mm以上は重量比0.4%

0.5%以上は全量歩

B

混入不

全量歩

A3%

混入不

全量歩

A5%

混入不

全量歩

A6%以

異樹

混入不

全量歩

A5%

混入不

原則として返

 

3.検収方法

・入荷全車について、絶乾率を測定して、受入重量を算出する。

(受入重量算出方法)総重量−車重量=実重量(kg

  実重量×絶乾率×受入率=受入量(t)

    ・絶乾率・・・・・少数第2位を45入、少数第1位まで

    ・受入率・・・・・100−歩引率合計

    ・歩引率・・・・・少数第2位を45入、少数第1位まで

・歩引量は、入荷車毎にサンプルを収集し、一定重量の試料により実測する。

 

準値を大きく超えた場合は単価の値引き、あるいは稀だが返品扱いになる場合もある。

上記したように、製紙工場のチップ受入には独自で基準を設けているが、その実際例を表1.5に示す。この事例では、受入チップの樹種、標準サイズ、チップ厚の集中度、品質基準、品質の検査項目と制限値、制限値を超えた場合の歩引量と単価値引き率、検収方法などが提示されている。

チップ受入基準は、各製紙用パルプ向けのほか木質ボ−ド、燃料、家畜敷料などの需要先にも設けられているようであるが、品質基準は製紙用パルプ向けより緩やかで、当然、単価水準も低いと云われている。

 

 

1.4 まとめ

国内におけるチップ工場では、原料利用量の15%に相当する立木手当の場合は90%までが材積㎥、85%に相当する原木(素材)手当は約70%が生重量t、1516%が層積㎥、14%が材積㎥で受入している。チップ原木が生重量や層積で受入することは、多様な径級で、しかも素性が不定なためである。しかし供給側への代金決済は、いずれも材積㎥で仕切っている。チップ原木を生重量から材積に換算するには、生重量に一定の係数を乗じる方法が用いられている。この係数は、一般に「チップ原木の容積換算係数」と称され、木材の容積密度と含水率によって算出する。この場合の含水率は、一般の木材や製材品が全乾重量を基準にしている(乾量基準含水率)のと異なり、チップ原木については木材に含まれる水分量を生材重量(含水状態の重量)で徐して算出する(湿潤基準含水率)のが一般的である。木材の容積密度と水分の関係を基礎にして換算係数を算出するに樹種別、径級別、密度別などに膨大なサンプルから解析する必要があるため、実際の取引では過去のデ−タと現場の経験値から係数を決定している。今回調査ではこの係数に針葉樹では0.680.83、広葉樹では0.670.73の値が採用されている。

製紙工場のチップ受入は重量であるが、実際の取引では、受入した車量毎の積載チップ量(生状態)からサンプルを採取して絶乾状態の含水率(絶乾率)を求め、これを全体の生重量に乗じて絶乾重量を基準にしている。さらに品質検査用のサンプルから、受入基準を超えるサイズ及びバ−クや節、腐れなどの混入率を求め、全体の絶乾重量から差し引き(歩引きと称する)し、取引上の重量として単価を乗じて決裁する方法が採用されているのが実態である。この検量・検収システムではサンプルの限られた採取方法や数量から全体重量を算定することに少なからず疑問を残すが、受入の件数や数量の多さの中で迅速な処理を行うには、先に述べたように現在の状況下においては、現行での扱い方以外には良策が見いだせないのが実態でもある。